『1976年のアントニオ猪木』(柳澤健著、文芸春秋)を読む。
1976年にアントニオ猪木が戦った4試合、2月ウィリアム・ルスカ戦、6月モハメド・アリ戦、10月パク・ソンナン戦、12月アクラム・ペールワン戦についての詳細なルポルタージュ。猪木が初めてリアル・ファイト(ルスカ戦を除く3試合)を行ったということから、また結果として「異種格闘技戦」はこの年から始まったという点からも、1976年という年はプロレスと総合との分水嶺だったと言えよう。
当時小学生だった私は4試合すべてTV(ペールワン戦はパキスタンで行われたため当時TV中継がなく後にビデオで)で見て単純に興奮していただけだったが、子供の頃には当然分からなかった事実や裏事情がたくさん書かれている。
オランダ柔道界におけるウィリアム・ルスカとアントン・ヘーシンクの評価や立場の違い、韓国プロレスの盛衰、日本のファンには知られていないパキスタン格闘技界の実態など、サイド・ストーリーも充実している。
丹念な取材や資料調査を通じて書かれたノンフィクションだが、読み進めながらまるでフィクションのごとく幻想的に感じられるのは、作者の筆致もさることながら、主題であるアントニオ猪木という才人の中に同居する「天才性」と「悪魔性」のなせる業かもしれない。大傑作である。
1976年にアントニオ猪木が戦った4試合、2月ウィリアム・ルスカ戦、6月モハメド・アリ戦、10月パク・ソンナン戦、12月アクラム・ペールワン戦についての詳細なルポルタージュ。猪木が初めてリアル・ファイト(ルスカ戦を除く3試合)を行ったということから、また結果として「異種格闘技戦」はこの年から始まったという点からも、1976年という年はプロレスと総合との分水嶺だったと言えよう。
当時小学生だった私は4試合すべてTV(ペールワン戦はパキスタンで行われたため当時TV中継がなく後にビデオで)で見て単純に興奮していただけだったが、子供の頃には当然分からなかった事実や裏事情がたくさん書かれている。
オランダ柔道界におけるウィリアム・ルスカとアントン・ヘーシンクの評価や立場の違い、韓国プロレスの盛衰、日本のファンには知られていないパキスタン格闘技界の実態など、サイド・ストーリーも充実している。
丹念な取材や資料調査を通じて書かれたノンフィクションだが、読み進めながらまるでフィクションのごとく幻想的に感じられるのは、作者の筆致もさることながら、主題であるアントニオ猪木という才人の中に同居する「天才性」と「悪魔性」のなせる業かもしれない。大傑作である。