ほっぷ すてっぷ

精神保健福祉士、元新聞記者。福祉仕事と育児で「兼業」中。名古屋在住の転勤族。

佐々木紀彦(2011)『米国製エリートは本当にすごいのか?』

2011-09-13 11:18:57 | Book
新聞の書評でいくつか紹介されていたので
手にとってみた。一日ちょっとで読める
読みやすい本。若い東洋経済の記者(1979年生まれ)
が書いただけある。

スタンフォード大学院に2年間留学した彼が出した
タイトルの問いのへ答えは、

すごいところ=エリートを育てるプログラム、
インプット量、討論の機会、レポートなどの
アウトプット量

すごくないところ=抽象的な思考は鍛えられるが
現実離れすることも多い、「世界一の島国」として
内向き志向の人が多い、とりあえず金融業界への流れ、、
などなど

といった感じでわりとドライに書かれている。
その理由を、それぞれの分野の名著などを持ち出したり、
大学の経営基盤やアメリカの歴史で
解説するので、「なるほど」という感じ。
例えば、アメリカのエリートは経済エリート、政治エリート、
軍事エリートに分類できるが、一番の地位は経済エリートが
占めている。アメリカには封建制度の歴史がなく、
貴族や武士が君臨したことはない、ブルジョアジーが
押さえつけられることなく権力や名声も手に入れてきた、
実際ゴールドマン・サックスのCEOになれば
財務長官(政治エリート)にもなっている、というように。
留学中のエピソードも交えていて、堅くなりすぎていない。

本の後半部分は、エリートを育ててきたアメリカと
日本の違い、特に外交面の政策の違いなどを多く取り上げ、
さながら彼の「卒業レポート」になっている。
外交政策論を真面目に勉強したことのない私には、
リアリストとリベラリストの定義の違いなど勉強になった。

私が一番この本に興味を持ったのは、経歴紹介によると
彼が28歳で留学し、2年を経て帰国し、復職して
32歳の今年にこの本を出していることだ。
32歳でこれくらいのこと書きたいもんだなあ、というように
いつの間にか読んでいた。
英語の勉強方など、同世代(?)として参考になりそうだった。