ほっぷ すてっぷ

精神保健福祉士、元新聞記者。福祉仕事と育児で「兼業」中。名古屋在住の転勤族。

本『人事のなりたち 「誰もが階段を上れる社会」の希望と葛藤』

2020-03-17 05:12:29 | Book
就労支援の仕事をしていてお会いする方のボリュームゾーンは、ひとつは発達障害の傾向のある方(20代以降で何かしらつまずいて支援機関に来られるので自覚がある場合が多い)。もうひとつは、少し学力や能力が足りないので、合う仕事の幅が狭そうな方。この後者は、以前なら高卒就職していただろうけど、大学になんとなく進めてしまい、新卒一括採用で敗退…という感じ。

この本によると、かつては高卒、短大卒の人が就職して担っていた仕事は、非ホワイトカラー(製造、流通、サービス、販売、事務、建設)の仕事で、これらが今、ガラッと非正規雇用になってしまっている。雇用量も流動的で、就職氷河期の現象が起きたり、フリーターが出てきたりする。彼らが大卒でホワイトカラー(営業、経理、人事、総務など)を目指そうとしても椅子が足りない、ということ。なるほど!と思いました。

本書を通じて明確になっていくことのひとつは、こうしたかつての高卒職で、階段を上って行かなくても良いコースの正規職。上っていけというプレッシャーなく、でも雇用は切られず、10年でも20年でも、さほど昇給かなくても同じ仕事し続けますよ、という選択肢。

今も昔も、日本の特徴としては、正規職、正社員はみな階段を上っていくことが前提で、無限定雇用だったし、その仕組みで嬉々として働く人もいたが、年功序列で上っていく賃金に見合った仕事、というプレッシャーに耐えられない人もいた。そその心理的な辛さはあまりこれまで考えたことはなかった。この点で私も、マッチョ思考に偏っていたのかも。

概ね、濱口さんの『新しい労働社会』で膝を叩いて納得した知識がベースとなっていて読みやすく、今の仕事と紐付けて新しい発見もあった。ではどうしていくか。正社員が新卒で肌の合う会社にマッチングするには。そして高卒職だった層が、安定的な職を得るには。ヒント部分をまた今度書き留めておきたい。また今度。

書評はすぐに書かないと…。濱口さんの『働く女子の運命』は文が止まっている!