日和見的にコロコロ変わる市場センチメント。前日のリスクオフから12日はややリスクオンに。米国の新たな関税警告に対し、中国商務省高官は、貿易戦争を始めたのは米国であり、中国は身を守ると非難。また、米国が約束を守らないならば通商協議は無意味ともした。しかし、直ちに報復計画の策定手順や手段を具体的に示すことを控えたことから、市場の緊張は後退。前日、幅広く売られた商品市場に巻き戻し的な買いが見られ、全般的に反発。株式市場も反発。定まった方針というよりも、ただ単に目先的に発生する「方向」に追随するだけの広義のモメンタムトレードの日々。
そもそも伝えられているように米国からの輸入金額は、輸出金額の半分以下という中国にとって、報復的な対抗措置といっても金額ベースでは限界があり、直ぐに提示できるものでもなし。したがって、現時点で出ていないことが単純に沈静化とは言えない展開。
12日は6月の米消費者物価指数(CPI)が発表され、(変動の大きい食品とエネルギーを除いた)コアCPIは、2ヵ月連続で前月比0.2%の上昇となった。前年同月比では2.3%の上昇と2017年1月以来の伸びとなるもの。安定的に上昇圧力を増している印象の結果に。
ところが、折しもこの日、パウエルFRB議長がラジオ番組に出演した際のインタビューで、「2%に設定しているインフレ目標を達成したとはまだ言えない」としていた。さらに「米国経済は非常に良好な位置にある」とする一方で、広範囲の高関税が長期間賦課されることになれば、貿易摩擦が米国経済にマイナスになる恐れがあるとした。貿易摩擦がどう展開するか予測するのは困難とも述べている。興味深いのは、歴史的な低失業率の中で目立って賃金上昇が見られないことに対する発言内容だった。雇用主から労働者を見つけられないという声を聞いているが、なぜ賃金上昇が加速しないのだろうか」と述べたとされる。「低失業率 ⇒賃金上昇加速⇒インフレ加速」という伝統的な捉え方に疑問が広がっている。こうした見方が広がると、政策方針も変わる可能性がある。
そもそもFRBが、政策金利の引き上げ加速を市場に印象付けると、短期金利の上昇ピッチが上がる可能性がある。12日時点でも長短金利差(10年債―2年債)は、0.236%まで接近し、どんどんフラット化が進んでいる中で、縮小傾向を早める可能性がある。直ぐに、だからどうこうなるというわけではないが、逆転現象は近い将来のリッセッション(景気後退)という経験則から、景気の先行きに対し弱気のセンチメントが生まれやすいという側面は否めず
パウエル議長は、来週、半期に一度の議会証言を予定しており、本日13日にFRB(連邦準備理事会)は、金融経済報告書を公表する。