先週末1月24日のNY金は反発。トランプ新政権が打ち出す政策の中で、関心の高い関税に関する方針が迷走する中で不確実性を手掛かりに押し上げられた。CTA(商品投資顧問)と呼ばれる短期筋のファンドの買いを背景に週初から徐々に水準を切り上げ、概ね2760~2770ドルを中心レンジに週末24日には一時2794.80ドルと24年10月31日以来の高値を付け2778.90ドルで週末の取引を終了。
前日23日にスイスで開かれている世界経済フォーラム年次総会(通称ダボス会議)にオンラインで登壇したトランプ大統領が、サウジアラビアなど石油輸出国機構(OPEC)に原油価格の引き下げを要請する方針を示すとともに、米連邦準備理事会(FRB)に対し利下げを要求したことが、NY金を押し上げた。発言を受けドルが売られたことに反応した。
先週までで4週続伸となり、この間に147.00ドル、5.6%の大幅上昇となっている。
毎週末に発表される米CFTC(米商品先物取引委員会)のデータでは、短期筋のファンドがこの間に買い建て(ロング)を重量換算で155トン増やし728トンまで積み上げていることが判明している。昨年10月末に2800ドルを超える過去最高値を付けた際の水準でもあり、短期的な過熱感は否めない。
興味深いのは、その一方で金ETF(上場投信)の最大銘柄「SPDR(スパイダー)ゴールドシェア」の残高が先週、連日減少しその減少量は約19トンに上っていること。
目先筋は昨年10月の高値を上抜くことで、テクニカル上のセンチメントの好転を狙っている可能性がありそうだ。つまり足元の金市場ではファンドの投機的な買い攻勢による過熱感が指摘できる。
報じられたように先週、トランプ大統領は中国からの輸入品に対して2月1日から10%の関税発動を検討していると明らかにした。選挙運動中に約束した60%の税率よりもはるかに低い。しかも現地23日夕刻には米FOXニュースのインタビューで、できれば中国に関税を課したくないとの考えを示したと伝わった。第1期政権と比べ周到な準備をした上で政権スタートに臨んだと見られていたが、こうした不規則発言など不透明感が漂い市場は方向性を見いだせないでいる。
ここまで堅調一方だった米景気のデータだが、週末発表のものはやや弱気なものが出たことで、前週まで年後半に1回だった利下げ見通しが6月に利下げというところまで復活。ただし、今週の米連邦公開市場委員会(FOMC)での利下げ見送り観測に変化はなし。
24日S&Pグローバルが発表した1月の米PMI(購買担当者景気指数)速報値は総合指数が52.4と前月の55.4から低下し、昨年4月以来、9カ月ぶりの低水準となった。また同じ日ミシガン大学が発表した1月の消費者信頼感指数の確報値は71.1と、6カ月ぶりに低下した。市場予想は73.2だった。