「 ハルチカ 」 を見る。
「 ベトナム戦争の時にアメリカ政府は、日本人観光客を無理やり 『 徴兵 』 して、ベトナムに送り込んでいた・・・・・・」。
これは、本当なのか。軽く検索してみたが、少なくとも、実際にそのような経験をした本人が事実を公表した例はないようだ。もし公になっていたら、8月ジャーナリズムが放っておくはずがないし、とっくの昔に映画やドラマの題材になっているだろう。ただ、徴兵令状が来た日本人留学生が自分から参戦したという噂は、あるらしい。
もしも日本人がいやいやながらベトナムに行って戦死したら、どうなるか。遺族が知ったら、黙っていないだろう。当時は日本でも 「 ベトナム反戦運動 」 が盛り上がっていたし、「 70年安保 」 もあって、反米機運が最高潮に達していた。こんなことが明るみに出たら、在日米軍に対する反発が激化し、戦争の継続、いや、日米同盟の維持が困難になっただろう。
また、本当は戦うのがいやな日本人の兵士が、たまたまベトナムで日本人のジャーナリストと出会ったら、どうなるか。前代未聞のスキャンダルとして、大々的に報道されただろう。
このようなリスクを冒してまで、アメリカ政府は日本人を 「 徴兵 」 しただろうか。考えられるのは・・・・・・。
このおじいさんは若い頃ゴリゴリの右翼で、共産主義勢力がドミノ式に拡大するのを防ぐためにベトナム戦争は必要だと、真剣に考えていた。それで、徴兵令状が来た時に喜んで応じ、アメリカ政府に忠誠を誓い、今までずっと秘密を守っていた。これなら、ありうる。
政治的な話ばかりしてきたが、そもそも画家は、実際に見たことのないものを作品として描くこともある。その点を忘れてはならない。要するに、主人公の推理には、客観的な証拠が何もないのだ。