ヨハネによる福音書の特異性その2。反ユダヤ的な要素。
「その後、イエスはガリラヤを巡っておられた。ユダヤ人が殺そうとねらっていたので、ユダヤを巡ろうとは思われなかった」(7、1)。
「ユダヤ人たちは、イエスを石で打ち殺そうとして、また石を取り上げた」(10、31)。
「ピラトがユダヤ人たちに、『見よ、あなたたちの王だ』と言うと、彼らは叫んだ。『殺せ。殺せ。十字架につけろ』」(19、14~15)。
「その日、すなわち週の初めの日の夕方、弟子たちはユダヤ人を恐れて、自分たちのいる家の戸に鍵をかけていた」(20、19)。
「ユダヤ人」が、徹底的に悪役になっている。特に、イエスが処刑される場面。他の福音書では、「ユダヤ人」は「群衆」、もしくは「人々」と表現されている。ヨハネによる福音書だけが、ことさらに読者のユダヤ人に対する憎悪を煽るような表現になっているのだ。イエス自身がダビデの子孫でユダ部族に属する、まさにユダヤ人なのだが(マタイによる福音書1、ルカによる福音書3)。
果たして、「ヨハネによる福音書」の作者は、十二使徒のひとりでユダヤ人の「ヨハネ」だったのか。キリストとユダヤ人を貶める意図で書かれているように思えるが。