先日、LUXMANのT-550Vを入手して修理完了したばかりだと言うのに、今度はTechnicsのST-8600ウッドケース付きのジャンク品が非常に安かったので、どうしても欲しくなり落札した。
1975年発売で、当時の価格が72,800円と中級品の部類でした。
当時の高級品を見るとFM専用チューナーのST-9300(128,000円)やST-9700(250,000円)という、飛び抜けて高価なのも発売されていました。機会が有れば試聴(性能比較)したいものです。
チューナーはバリコンの段数が多く、回路部品もぎっしり実装されている昔のチューナーが好きである。
【商品状態の説明】
①メーター振れます。シグナルは受信している様ですが、音は出ません。
②ツマミが一部曲がっています。画像でご確認ください。
③付属品はウッドケースと取扱い説明書です。ウッドケースはそれなりに使用感があります。
があり、この説明範囲では直りそうなので落札した次第です。
②はツマミを抜いてシャフトをペンチで簡単に修正しOK
①は動作確認するまで、音声増幅部が原因かと勘ぐっていたが、スイッチを入れると、AM放送はちゃんと音声が出て来た。FM放送はミューティングスイッチをOFFにすると音声が出るがステレオにならないと言う症状でした。
これは、ちょっと厄介だと思って、回路図を検索したが見つからず、代わりに以前にもお世話になったBLUESS Laboratoryのブログがヒットしたので、メールで依頼したところ快く資料を送ってくれた。
MPX用IC(SN76115N)が不良かも知れないとパイロット信号モニターピンの周波数をカウンターで見たが19kHzピッタリ出ている。一応交換してみようと、ICを取り外し代わりにICソケットを付けようとしたが7.62ピッチより広いので、シングルインラインのソケットピンを2列半田付けした。
SN76115Nは手持ちが無いのでuPC1197Cにしてみようとしたのだが、SN76115NはDIP14PでuPC1197CはDIP16Pなので基板に穴開けしようとしたら、既に予備穴が開いていた。何か別なICでも使える様にしているのか?
但し、増えた2ピンの接続が異なるので改造する(残りの14ピンは幸い信号名は一緒)。交換して見るがやはり動作せず、かえって音声出力も小さくなってしまう。パイロット信号は出ている。データーシートを比較すると、音声出力に入れているCRの接続先がVCCとGNDで逆になっている。正常に動作させるには、改造が少し大きくなる。
ということでMPX回路は後回しにし、別な原因を探ってみた。
FM/AM用の信号発生器を持っているので、アンテナに接続して、各増幅部の信号波形をオシロで見ながら、調整箇所をいじくっていく。
そうすると、ミュートIF増幅部の出力にあるトランス(コイル)T251とT252の調整でレベルが大きくなり、ステレオ受信ランプも点灯した。故障原因はこれだった様だ。
トランス出力にオシロを接続し10.7MHzの信号が最大になる様に一旦調整し、あとはセンターメーターを見ながら離調時、どの位置でミューティングが掛かるかバランス良くなるようにT251とT252を微調整していく。
他の調整箇所は下手にいじるとかえって特性を悪くする恐れが有るので、周波数トラッキング調整のみ行って修理完了とした。
ということでMPX-ICは問題無かったが、ミューティング回路とステレオ切替の関連がイマイチ確認出来ていないので、時間の有るとき、じっくり回路図を分析してみよう。
マルチパスも出力ジャックが有るので、オシロで測定してみたが、波形上、マルチパスは無く、単に電波が弱い(アンテナが貧弱なので)だけの様だ。LUXMAN製T-550Vと切替ながら聞き比べて見ても、雑音が目立たなくなる(ハイブレンド機能が効いている)のが良く判る。
各部写真「ST-8600-shuuri.opdf.pdf」をダウンロード
私が最初に購入したチューナーがTechnicsのST-3500 (ST-8600と発売年は同じで8,000円の差ではあるが)で、当時の給料では、貯めてやっと買った思い出がある。当時の価格で64,800円した。周波数目盛がリニアだったのと、同僚が購入したパイオニア製チューナーより性能が良かったからである。
これも、壊れてしまった(実際は壊してしまった)のだが、愛着が有り、オークションで同じジャンクを入手して修理、現在も使っている。ブログを見た遠くの方から調整を依頼されたことも有る。
今回のことで、ST-3500には悪いが、丁度息子が遊びに来ていて、引越し先でFM受信具合が悪くなった(これもジャンクを修理してプレゼントしたCT-2000を使用)と言うので、持っていってもらった。
ST-8600の音を聞いてしまうと、ST-3500には悪いが見劣りしてしまう。
高音の延びが良く感じる(周波数特性は18kHzまで延びている)。
あと面白い機能で、テープ録音時にプリエンファシスの掛かった状態で録音し、再生時にチューナー内のディエンファシス回路を通すことでヒスノイズを低減するというものだ。録音時のレベル調整用にピンクノイズも出力出来る。現在のデジタル録音では必要の無い機能では有るが、当時の工夫が窺える。
今後、メイン機の座に座りそうだ。(これで、なんと本体落札価格1,000円でした)
BLUESS Laboratoryさんの資料のお陰でスムーズにトラブルシュート出来ました。
ここに感謝申し上げます。