Pの世界  沖縄・浜松・東京・バリ

もの書き、ガムランたたき、人形遣いPの日記

バリは癒しの楽園か?

2007年08月02日 | 家・わたくしごと
 パソコンを開くと、JALからこんなツアーの紹介されたメールが届いていた。

「ウブドの北、聖なる渓谷にあるヒーリング・リゾート「バグース・ジャティ」とプライベート・ビーチがあるホテル「ニッコー・バリ・リゾート&スパ」にご宿泊いただき、ヨガ、スパ、足裏デトックス、リッツ・カールトンのアクアトニック・プールでのエクササイズなどお楽しみいただける、内容充実ツアーです!」

 なかなかゴージャスなツアーである。それにしても最近のバリ観光は、ヒーリング、スピリチュアル、そしてリラクゼーションで成立しているかのようだ。上の宣伝文句には、バリ文化と関わる単語はたった一言もないのである。それにしてもいったいバリはいつから「癒しの楽園」になったのだろう?だいたい、ウブドの北には「聖なる渓谷」なんてあったのだろうか?
 実は今、そんな論文を書いているのである。これまで二十数年間、買い貯めてきた旅行ガイドや雑誌のバリ特集を毎日ぼんやりと眺めるだけで、なかなか筆は進まないのだけれど。きっかけは、今年の3月に見た観光用の芸能バロン・ダンスである。数百人は収容できる観光客用劇場には、上演が始まっても30,40人しか観客がいないのである。これには少々面食らってしまった。バロン・ダンスといえば、観光芸能の定番で、たいていはどの劇場も満員とはいわずとも、80パーセントは入っていたのが普通だったからだ。
 たぶん「癒し」のバリは、バリの文化観光を変えつつあるのだ。フラワーバス、フェイスマッサージをしてもらって、田園風景を望む人里はなれたヴィラでのんびりと休暇を過ごすのは、それなりに気持ちのよいことなのかもしれないが、それまでの「南国エキゾティシズム」を前面に出した文化観光がすっかり影を潜めてしまった感がある。だいたい朝9時半から始まるバロン・ダンスに行くためには、ホテルを8時半に出なければならない。それではのんびりとホテル・ライフを楽しみ、リラクゼーションを満喫することなどできるわけはない。
 だいたいガムラン音楽ですら、「癒し」と結び付けて論じられるようになってきた。ガムランは、人間の耳で聞くことの出来ない高周波を出すことで癒しに通じるそうである。さらには、数年前からガムランボールとよばれるミュージックボールがバリのお土産の定番となり、それを買って、耳元でそれをシャラシャラと音を鳴らすだけで人々は「癒されて」しまうらしい。ガムランまでもが「癒しの音」へと爆走しているのである。