社会福祉士×ちょっと図書館司書の関心ごと~参考文献覚え書き

対人援助の実践、人材育成、図書館学を中心に気まぐれに書物をあさり、覚え書きをかねて投稿中~

『過去でも未来でもない「いま」と向き合う-ソーシャルワークの現場から』芦澤茂喜(2019) 月刊自治研

2019-11-09 21:23:26 | 社会福祉学
ひきこもり支援を実践しているソーシャルワーカーのインタビュー記事。
伴走支援というスタイルを獲得したプロセス、ひきこもり支援の面白さ(失礼な言い方ですが・・・)を知ることができ、とても読みやすい。

引用⇒
・よく、ひきこもりの方は家でゲームばかりしていると思われていますが、多くの当事者は一日中、ただひたすら考え続けています。(中略)今の状況でいいのか、どうすればいいんだ、どうしようもない、ということをただ繰り返し考えています。
・彼らにとっては一回のつまづきが全てです。彼らは過去に止まっています。自分がつまづいた時に何があったのか、ということをずっと言い続けます。一方、ご家族は「私たちが死んだらどうするのか」といった未来の話をします。話が噛み合うはずがない。私がするのは、過去と未来の真ん中にある「今の時間をどうするのか」という話をひたすら続けていくことです。彼らがどこでつまづいているのかを確認した上で、時計の針を再び動かせるかどうかがポイントになってきます。
・よく「ひきこもりは甘えている」と言う方がいますが、彼らが甘えられるのは家族だけ、しかも母親だけにしか甘えられない場合が多いです。逆に言えば、母親以外の人間に甘えることができれば、事は動いてきます。そうなれば、後は早いです。
・彼らが「困った」と言えば、「困ったね。じゃ、どうする?」と言う。それだけです。最終的には、彼らがどうにかすることなので。

😊 😊 
 おそらくこのスタイルに行き着くまでは、たやすい道のりではなかったのだろうとは思うのだが、「こんなにシンプルな方法で、支援が円滑にいくんだ」と目から鱗が出る。
 公的な職場であるため、おそらくいろんな意見のなかでの業務だとは思う。しかし、当事者には「支援者」ではなく「芦澤さん」という存在と見られている、というくだりについては、ものすごくナチュラルで羨ましいと思った。
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「チーム力を高める 多機関協働ケースカンファレンス」安心づくり安全探しアプローチ(AAA)研究会

2019-09-25 15:38:29 | 社会福祉学
 多機関でのカンファレンスをより効果的に進められるように、AAAが開発したシートを紹介。事例を用いて紹介している。
 AAAは高齢者虐待を防止するための取り組みをされているが、このカンファレンスシートは高齢者虐待事例以外でも、多機関での取り組み(支援)の経過、今後の方向性を整理するためにも活用できると感じた。

引用⇒
・AAA多機関ケースカンファレンスの5つの原則
1.「話す」ことと「聴く」ことを分け、話し合いの<余地>を拡げる
2.事例に関する問題・リスクとストレングスをバランスよく検討する
3.「事例」の理解だけではなく「支援者の関わり方」を再点検する
4.問題の共通理解ではなく、「今後の見通し」の共有を目的とする
5.お互いの「違い」を大切にして、「チーム」の力で支援の質を高める

😊 😊 
 困難事例にぶつかると「目に見える結果」を求め、結果が出るような「方針」を作りがちである。しかし結果が全てではなく、役割分担を確認し、今していることを確認し、今後何ができるのかを考えていくことこそがカンファレンスであろう。

本書で紹介されているシートにはストレングスの視点が盛り込まれている。本人や家族のみならず、支援者についてもストレングスの視点が注がれていることが、個人的にはとても嬉しかった。

 
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「ひきこもる今と向き合う 精神保健福祉相談員の立場から」芦沢茂喜(2019)

2019-06-03 14:43:54 | 社会福祉学

『保健師ジャーナル』2019.6 Vol.75 No.6

保健所でひきこもり事例と向き合い、実践している精神保健福祉相談員さんの論文。

凄惨な事件が立て続けに起こり、さまざまな議論が飛び交っている今日このごろ。誰にとっての支援なのかをあらためて考えたい。

 

引用

・私たちは家族からの相談を受けた時、何気なく「様子を見ましょう。何かあれば教えてください」と話してしまうことがあります。ただ、こう話すには、今後に起こる「何か」を分かっており、それを家族に説明できる状態でなければならないと思います。分からず、説明できないのであれば、関わり続ける必要があります。

・「支援」という言葉は都合の良い言葉であり、行っていることが全て良いことのように捉えられ、正当化される怖い言葉だと感じます。「支援」といった場合、そこには根拠がなければいけません。また、「支援」とは困っている人に対して手を差し伸べることであり、家族が、私が、困った人をどうにかすることではありません。

 

「気にかけていいますよ~」という意味合いをこめて、「何かあったら連絡をください」と電話を切ったり、面接を終了することはよくある。それは誰のための締めの言葉だったのか?とあらためて考える。

面接時間が長時間に及び、そろそろおしまいにしたいときの決まり文句であることもある。相談窓口はいつでもオープンですよという気持ちで終了するときの言葉のときもある。

その場面場面によってこちらの気持ちは違うけれども、受ける人にとっては、その言葉だけなのである。

具体的に、相手にあった言葉を選んで伝えないと、きっと関係はつながらないとしみじみと思わされた。

 

 

 

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「三次救急病院における救急認定ソーシャルワーカーの役割」澤井彰、畠山稔

2019-05-11 14:57:47 | 社会福祉学
『医療と福祉』No.105 Vol.53-No.1 2019-5

救急医療の最前線で実践をしているソーシャルワーカーによる報告。

引用
・救急認定ソーシャルワーカー介入事例をソーシャルハイリスク別に分析した結果、「地域とのつながりが不安定であり、医療同意が取得しにくい症例」や「入院適用はないが、在宅療養が困難な症例」に対する介入比率が高い傾向になった。
・(調査結果から、筆者の所属する三次救急病院における)救急認定ソーシャルワーカーの役割は、①救急外来におけるメディカルマネージメントを図る役割②救急外来から地域の開業医・二次救急病院・介護施設と橋渡しを行う役割の二つが大きな①を占めると考察した。


 「散在している業務をどのようにして専門的なものであると位置づけるか」・・・その作業を試行錯誤で行っている様子が伺える論文であった。
 私は10年ほど前に、在宅療養支援診療所に所属するソーシャルワーカーの役割に関する調査を何度が行ったが、「雑務」と片付けられてしまう業務を、「ソーシャルワーカーだからこそ」という位置に整理することに、大変苦労した。しかしここ数年で在宅医療を活動の場とするソーシャルワーカーが増加し、その専門性も認められている。
 
 ひとつひとつに意味をもたせ、専門性があると位置づける作業は、その先のソーシャルワーカーたちの活動の場を広げることにもなる。そしてそれこそが、実践と研究を並行して行う醍醐味なのだと思う。
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「今を見つめ、関わり続ける」芦沢茂喜(2019)

2019-04-10 15:17:05 | 社会福祉学
保健福祉事務所に勤務し、ひきこもり支援をしているソーシャルワーカーさんの報告。
過去でも、未来でもなく、「いま」に注目し、いまを一緒に生きることを実践されている。
目標の設定→目標の達成・・・は誰のためにあるのか。そんなことを考えさせられる。

引用
・将来へのリスク対策として、就労に向けた訓練等がこれまでも行われてきましたが、必ずしも効果をあげてきたわけではありません。職に就くか否かといった将来の話の前に、人と関係を結ぶことが出来ていない今の状態に注目し。その状態を認めた上で、関わる、関わり続けることが重要だと私は思いました。
・そもそも、誰にも頼らずに生きている人はいません。(中略)大事なことは甘えているか否かではなく、そのバランスであり、問題は家族だけ、なかでも母親だけに依存し、それ以外に依存できないことだと考えれば、彼らとの関わりにおける目標は「家族以外の依存先を増やすこと」(熊谷晋一郎)なのです。それならば、私が母親以外の彼らの依存先になり、私を通して依存先を増やしていくことが必要だと思いました。
・彼ら(ひきこもりをしている本人や家族)との関係性において、私は語弊があるかもしれませんが、強く、太いものを求めていません。弱く、細いもので、今にも切れそうであっても、切れずに続いている、そのような関係性が重要だと感じます。
・大事なことは家族や本人が私を利用することであり、私が利用される人材でいることのように感じます。


ソーシャルワーカーは、その存在そのものが社会資源である。・・・これは私が学部時代にゼミの先生から言われたことであり、実践のなかで常に意識していることである。使われる価値のある専門家でありたい。そう強く思わされた。


都市問題 2019年 04 月号 [雑誌]
後藤・安田記念東京都市研究所
後藤・安田記念東京都市研究所
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「高齢者ショートステイにおける生活相談員の悩みとは何か-全国調査における自由記述の分析を通して」口村淳(2011)

2019-02-28 12:06:47 | 社会福祉学
 高齢者ショートステイにおける生活相談員の悩みを明らかにし、それらを改善する方向性を示すことを目的としている。

引用
・(調査協力者の)取得資格を複数回答で尋ねたところ、社会福祉主事が63.1%で最も多く、次いで介護福祉士の56.7%であった。施設ケアマネを兼務している人は約2割であった。
・(業務量が多いという回答を受けたの考察→)相談員の業務だけで飽和している上に、他職種業務に携わることは、施設の相談機能に支障をきたすことにもなりかねない。
・経験年数の浅い相談員がリスクに対して腐心している傾向がみられたことから、リスクに関する業務を相談員のみに背負い込ませない体制が望まれる。


 稼働率を上げることが期待される側面、自宅と施設との往復を円滑に送れるように連携に力を入れることを期待される側面、質の高いケアを提供できるよう介護のマネジメントを期待される側面など、多くのことを期待されているのを間近で見ている。
 私の同僚の相談員さんは介護福祉士さんであり、施設での介護業務の経験が長い。故にか、「連携」という面には少し弱みを感じる。
回答に時間をかけすぎてしまったり、反対に事前のアセスメント(情報収集)が手薄なままに早く動きすぎてしまって一人で空回りをしてしまったり。そして残念ながら、それをバックアップし教育できる組織の体制は全くと言っていいほどない。自己研鑽にまかせているのである。
 これは少なからず、どこの高齢者施設も抱えている現状である。職員個人に多くを任せ、うまく回っているとまた業務を課す。そして職員は潰されてしまう。
経営者からは「社会福祉法人だから利益は出してはいけない」という意見が出る。経営は難しい。でもなんとかならないのか?と日々思わされている。
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「ソーシャルワーク実践研究の目的」 副田あけみ(2018)

2019-01-07 14:08:13 | 社会福祉学
『福祉社会学研究 15』

 主にご自身のこれまでの研究活動をまとめ、報告している。
 近年は高齢者虐待防止のためのプログラム開発に尽力されているが、今後は「クライエント・バイオレンス」に関する研究をされる予定との報告。


引用
・クライエント・バイオレンスは、クライエントやその家族による、言葉の暴力、脅し、物理的攻撃、器物損傷(職場の備品やワーカー個人の所有物の損傷)を指す。
・支援者の安全が守られて、安心して仕事に携わることができてこそ、クライエント/利用者やその家族と関係をつくり、支援を行っていくことができる。


 支援者が守られてこそ、支援は継続でき、質も保障されるのだとあらためて考えさせられた。
 社会福祉の実践者は、研究と実践の両輪がうまく噛み合ってこそ、両者の質が維持できると個人的に思っている。私は実践者を経て大学院で研究(方法)を学び、再び実践の場にいる。
そのため、大学院時代の友人は実践者→研究→実践者+研究者というスタイルをとっている人も多い。中には研究活動を否定され、実践の場である福祉の現場で、援助活動を阻害されているという話も聞く。
福祉サービスの質の向上には振り返りが必要不可欠であり、研究活動は大いに有効な手段である。その必要性と意義を、より多くの人に感じてもらいたいと思っている。
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「施設ケアマネジメント 利用者支援とチームづくりのポイント」中野穣(2018)中央法規出版

2018-12-24 21:51:59 | 社会福祉学
 施設ケアマネジメントについて、イラストも用いながらわかりやすく説明している。
 ケアプランが果たす役割、ケアマネージャーの立つべき位置など施設ケアマネのみならず、ケアマネージャー全般に役に立つ印象を持った。

引用
・サービス内容は「量」ではなく、「誰が・どこで・何を・どのように」するのかが、利用者・家族にわかるように記されていることが大切です。
・利用者の自立支援に最も大切な視点は、病気や障害を把握することではなく、“生きることの全体像”を共有することです。



 施設ケアプランは、どの程度現場の人の目に触れているのだろうか?という根本的な疑問を解消するために、本書を手にとった。
もちろん法的にはケアプランを立てることが義務付けれらているが、残念ながら私の勤務している特養では、その存在すら知られていない印象を受ける。
ケアの質を保障するためには、その根拠となるものが必要であり、それこそがケアプランだ。

なにか打開策はないか。まだまだ読み込みが必要だと痛感している。


施設ケアマネジメント: 利用者支援とチームづくりのポイント (だいじをギュッと!ケアマネ実践力シリーズ)
クリエーター情報なし
中央法規出版
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「在宅医療の現場で働くソーシャルワーカーの発展にむけて」(公社)日本医療社会福祉協会ニュース2018.10.31

2018-11-08 09:04:21 | 社会福祉学
 保健医療ソーシャルワーカーの職能団体である、日本医療社会福祉協会の会報より。

引用
「在宅医療の現場では所属機関が異なり、点在している専門職が連携してひとりの患者や家族に関わっていきます。よって、真の多職種連携が必要不可欠です。日本協会は(中略)今後も在宅医療の現場で活躍する様々な職種の職能団体と連携し、実践に生きる研修やサポートの提供を目指していきたいと思っています」


 私がソーシャルワーカーとして、在宅医療の現場に就職したのは1999年、介護保険法施行の一年前です。
 大学を卒業したてで、右も左もわからない。そんな状況で職場の先輩や他職種の同僚から多くのことを教えてもらい、そして患者さん・ご家族から身をもって「家で生き続けることの尊さと難しさを教えていただきました。
 在宅医療の場でソーシャルワーカーはどのような役割を果たすのか?この問いの答えを知るために、研修や大学に足を運んでも、同時は「ん?在宅にワーカー?どういうこと?ケアマネじゃないの?」とちょっと煙たい存在だったように思います。この会報を出版した職能団体に論文を投稿したり、大学院で研究を進めたり。自分なりに試行錯誤をして20年が過ぎていました。
 大学院時代の先生から、「本当にそれが必要だと思ったら、言い続けなさい。30年経てば風向きはきっと変わる」と言っていただきました。本当にそうなんだと、この会報を読んで思いました。

 在宅医療の現場は、人間としてもソーシャルワーカーとしてもものずごく成長ができ、本当におもしろくやりがいのある領域です。
 私は今は家庭の事情を優先し、違い領域で仕事をしていますが、根っこにあり、いつも恋しく思っているのが在宅医療の領域です。

 職能団体がサポートの対象としてくださったことがものすごく嬉しく、今後も在宅医療の場が多くのソーシャルワーカーの育成の場になって欲しいと思っています。

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「重症心身障害児とその母親のショートステイ利用に関する一考察-母親の語りからみえた子育ての困難さ-」千葉伸彦

2018-10-22 05:32:29 | 社会福祉学
 『東北福祉大学研究紀要 第39巻』

 重症児を対象としたショートステイサービスについて、主たる介護者である母親へのグループインタビューを通して、その現状と課題を整理している。少し前の論文ではあるが、母親の切実なる願いは、今も変わらぬ課題であろう。

引用
・(2011年に発行されて本によると)全国には約39,500人の重症心身障害児者はがいると推測されており、在宅で生活する重症心身障害児は約27,000人と、約7割が在宅で生活を送っている現状がある。
・精神的負担の解消として、介護者である母親らへの丁寧な相談支援、カウンセリングが求められると言えるだろう。
・(インタビュー調査結果より、)サービス事情所不足に関する困りごととして、7点が整理された。①事業所の増数 ②利用時期の不明確さ ③予約でいっぱい、キャンセル待ち ④新規利用不可 ⑤利用する子ども、家族が多い ⑥医療的ケ 
  アを実施できる事業所がない ⑦緊急時に利用できない
・常時利用できる社会資源の存在が母親への安心できる材料になっていることも事実であると考える。



 「録画したドラマをコールに気にせず、一気に観たい!」。これは以前私が関わった、在宅で神経難病の母親を介護していた娘さん(当時30代)の言葉である。在宅で要介護者とともに生活するしんどさは、当時独身であった私にはピンと来なかった。しかし子どもを産み、昼寝をしている間だけが自分の時間であることを痛感し、先の彼女の言葉はその壮絶さをとても分かりやすく表現していたのだと実感した。
 高齢者のショートステイの受け皿は、現政権の賜物か?!増加傾向にある。しかし医療的ケアを必要とする人のショートステイ先は、高齢者も子どもも、まだまだ十分ではない。ひとつひとつの声を大きなものに変え、サービスの改善につなげていかなければいけないと、あらためて考えさせられた。
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