社会福祉士×ちょっと図書館司書の関心ごと~参考文献覚え書き

対人援助の実践、人材育成、図書館学を中心に気まぐれに書物をあさり、覚え書きをかねて投稿中~

ホスピス緩和ケア病棟におけるHIV/AIDS患者の受け入れのための環境整備とソーシャルワーカーの役割

2009-03-27 09:54:42 | 社会福祉学
副題:~Aさんの遺言を受けて~
 正司明美・橘直子(2009)『医療と福祉』No.85

緩和ケア病棟に勤務するSWと研究者が行った調査研究等を踏まえた報告。
緩和ケア病棟の入院対象は、「末期の悪性腫瘍患者又は後天性免疫不全症候群に罹患している患者…」となっているのものの、特に後天性免疫不全症候群の患者は、その受けいれが十分に行われておらないのが現状である。
その要因は何か、そしてSWとして果たすべき役割は何か。
簡潔かつ明瞭に書かれており、大変興味深かった。


「なぜ受け入れられないのか?」それは診療報酬の壁であったり、「感染」に対する組織の体制づくりであったり…。HIV/AIDS患者特有の問題である部分、一般化できる部分。組織において「患者を選別する」ことから波及する多くの問題を、あらためて考えさせられた。

以前、現場でクロイツフェルト・ヤコブ病の患者さんと関わった時のことを思い出した。
入院先の病院は感染対策について、「他の疾患となんら変わりない。特別視する必要はない」という見解であったが、在宅で援助を担当する主治医や訪問看護ステーション、ヘルパーステーション、そして保健所サイドは、「ハラハラ」した思いで退院を待っていた。それは「はじめての経験」であったのと同時に、「病院のような箱モノでの管理体制と、多くの人が出入りする在宅での管理体制では違いがあるはずだ」という一種の恐怖感があったからだ。
最終的には、情報収集や機関間での情報共有、勉強会の開催を通して、「普通のこと」として対応でき、スムーズな医療提供・介護サービスの提供ができた。

在宅は、疾患や年齢を問わず、多くの方を受け入れる(サポートする)「場所」である。病院のように「うちでは対応できない」という判断は、医療難民を生み出すことにつながったり、最期の場の選択を「させない」ことに繋がる。
「何ができて、何ができない」「できないのなら、なぜできないのか」を考えつつ、社会に伝え「改良」させていくことの必要性を、この論文を通じて痛感させれれた。
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