社会福祉士×ちょっと図書館司書の関心ごと~参考文献覚え書き

対人援助の実践、人材育成、図書館学を中心に気まぐれに書物をあさり、覚え書きをかねて投稿中~

「高齢者を対象とした在宅ターミナルケアにおける介護支援専門員の役割」

2010-06-06 07:13:02 | 社会福祉学
堂園裕美、岡田進一、白澤政和 『生活科学研究誌』Vol.6(2007)

在宅ターミナルケアの支援を経験したことのある介護支援専門員3名に対する、非構造化面接による調査の報告。
高齢者の在宅ターミナルケアには必要不可欠の職種でありながら、これまでは「役割」の具体的な提示に踏み込んだ調査がなかったとのこと。
調査結果では、介護支援専門員の「ことば」「想い」がそのまま書かれており、そこに注目することで、介護支援専門員の実際をも知ることもでき、とても興味深かった。

この論文での「高齢者の在宅ターミナルケア」の定義
死期の近い状態にある高齢者が、原因疾患の有無に関わらず、自宅において身体的状態の安定してい時期から、死の瞬間まで自らの人生を自己決定する自律した生活を維持するための包括的なケアおよびその死後に残された者へのケア」

引用
・「在宅ターミナルケアでは、利用者や家族のニーズを充足することそのものが、人生の幕引きの準備となり、やり残したことへの整理につながる。」
・調査結果から得られた、在宅ターミナルケアにおける介護支援専門員の役割(6つ)
「インテーク」「自己決定支援」「協働」「家族介護者への対応」「物理的環境調整」「ケア全体の評価」


死後に残された者へのケア…をターミナルケアの定義に含みながらも、実際は介護支援専門員各々の裁量(時間のゆとり)に委ねられていることについて、今後の課題としている。
これはもっともなことで、筆者も指摘しているが、その担い手が明確にされていない現状が大きな問題である。
介護報酬や診療報酬が唯一の担い手への経済的な保障の術であり、それが担い手の「時間の確保」につながる。その業を担いたい、もしくは担っている現場の人は多くいるだろう。あとは、それを保障する後押しが必要だと痛感する。




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2 コメント

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いまは医療連携で限界 (ssyounnosuke)
2010-06-06 18:22:30
本稿対象の論文読みました。

介護支援専門員の在宅ターミナルケアの時期に行う支援内容は医学的支援が中心で介護的支援は副次的立場になり、結果、介護支援専門員は支援や調整で係ることより「直接援助」の機能を発揮する立場となる、との指摘はその通りであります。
ついで問題としている介護支援専門員の在り方論と制度論は課題であることもそうでありましょう。

この議論に加えることがあるとするば本人の意思尊重をどこまで主張しえるか、役割の議論が不足しています(本稿の目的ではありませんが)。


私見では担い手とその経済的保障がない限り介護支援専門員が在宅ターミナルケアを担うことには限界があると言わざるを得ません。
同時に在宅ターミナルケアの「直接支援」業務が介護支援専門員の業務範疇かどうかの議論も必要なことは同意見です。
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ssyounnosukeさん (管理人)
2010-06-08 08:31:33
いつもコメント、ありがとうございます。

在宅ターミナルケアには必須の職種でありながら、その保障についての議論は未だ煮え切らない状態が続いていますよね…。

現場からの声は、いつも後回しになっている気がしてなりません。
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