社会福祉士×ちょっと図書館司書の関心ごと~参考文献覚え書き

対人援助の実践、人材育成、図書館学を中心に気まぐれに書物をあさり、覚え書きをかねて投稿中~

大都市高齢者の社会的孤立の発現率と基本的特徴 (斉藤雅茂、冷水豊、山口麻衣、武居幸子)

2009-06-18 15:11:39 | 社会福祉学
『社会福祉学』Vol.50-1(2009.5)

東京都板橋区に住む、ひとり暮らし高齢者に対する訪問面接の調査結果の報告。
社会的な孤立は、「未婚である、子どもがいない、収入が少ない」人が多いとのこと。
また、ちょっとした用事をしてもらったり、長く寝込んだときに看病や世話をしてくれる人がいると回答した人は、全体の1割強しかいないという結果が報告されている。
「いっしょにいてホッとするひとがいる」と回答しても、その相手が必ずしも「世話を頼める相手」とは限らない…ことも明らかになった。
情緒的なつながりとは別に、より現実的なサポートネットワークが必要であることが課題として提起されている。


2025年には、ひとり暮らし高齢者が680万世帯になると予想されているそうだ。
この世帯のすべてが「孤立状態」ではないと思うが、斉藤らの調査結果を踏まえると、日常生活の世話を気軽に頼める相手がいる人は、この1割程度になるのだろう。
今の高齢者層は、ある程度の地縁がある印象を受けるけれど、約20年後の高齢者層(いまの40代以上)にはどれだけの「地縁」があるのだろうか?もしくは、「消費者姿勢」が浸透している世代であるからこそ、「地縁」に頼らず、「サービスを買う」ことに積極的かもしれない。
いずれにせよ、選択できるだけのサービスがそろっていないと、多くのひとにとっての「安全な生活」は保障されないであろう。

ひとり暮らしであろうとなかろうと、「孤立」は避けたいものであり、それを回避するためには何が必要か?と考えるには、とても参考になる論文である。


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