社会福祉士×ちょっと図書館司書の関心ごと~参考文献覚え書き

対人援助の実践、人材育成、図書館学を中心に気まぐれに書物をあさり、覚え書きをかねて投稿中~

「逝かない身体 ALS的日常を生きる」川口有美子(2009)医学書院

2010-02-07 20:26:55 | 医学
ALSに罹患した実母の在宅介護記録。
家族の葛藤、本人とのコミュニケーション形態の変化などなど…疾患が進行する過程をとても細やかにそして冷静につづっている。
医療者、福祉関係者等、援助者サイドからは絶対に表現できない/されないであろう「実態」がリアルに書かれている。

引用
・他の疾患はどうだか知らない。でもとにかくALSとは、「受容」するどころのものではないのは確かだった。家族にとってもALSが飽かずに繰り出す障害に、知恵を絞って対抗する日々である。
・介護疲れとは、スポーツの疲労のように解消されることなどない。この身に澱のように溜まるのである。
・ALSの人が家族ともども入居できるケアホームがあったら、利用したい人はたくさんいるはずだが、いまだにそのような場所はない。
・ALSの人の話は短く、ときには投げやりなようでもあるけれども、実は意味の生成まで相手に委ねることで最上級の理解を要求しているのだ。
・(介護をしていた実母が亡くなった後)残された人は燃え尽きてしまうわけにはいかない。これからは、自分の人生をそれぞれに生きていかなければならないのだ。「自分の好きなことをしなさい。」これはALSの介護をしてきた家族にとっては大変難しい。


眼球の動きもとまり、瞼も閉じたままの状態であっても、その人の感情を「脈拍」や「血圧」「顔色」で感じ取る…これは、濃密な時間を共有した者だけがなせるものであり、そしてこういったコミュニケーションのあり方を述べられるのは、家族介護者だけであろう。
本書を読むと、援助者が考える(受けた教育を含む)「支える」ということと、家族介護者が感じるそれとは、やはり大きな違いがあるのではないかと感じる。
それは「職業」としての倫理や方法論というものではなく、もっと根本の、「その人とどう向き合いたいか」にあるのではないかと感じた。

あまりにも圧倒的な記録で、でも冷静で…。何とも表現しがたいくらいに、考えさせられた。


逝かない身体―ALS的日常を生きる (シリーズケアをひらく)
川口 有美子
医学書院

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