どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

火うちばこ・・アンデルセン

2013年04月02日 | 絵本(昔話・外国)
アンデルセンの絵本 火うちばこ  

  火うちばこ/原作 アンデルセン 文・絵 エリック・ブレグバッド 角野栄子・訳/小学館/2004年初版

 

 戦争が終わって、ひとりの兵隊が家に帰る途中に魔女に会う。この魔女ががらんどうになっている木を降りて行って火うちばこをもってきてほしいという。みかえりに金持ちになれるという。がらんどうになっている木の下には部屋が3つあり、最初の部屋には、テーカップ目玉のどう猛な犬が銅貨の入った箱の上に、2番目の部屋には、水車目玉の犬が銀貨の入った箱の上に、さらに3番目の部屋には、円塔目玉の犬がいて、金貨の入った箱の上にすわっている。

 これらの犬は魔女のエプロンの上におくと悪さをしないといわれて、兵隊は銅貨を手に入れるが、2番目に銀貨を手に入れると、ポケットを銀貨でいっぱいにする。3番目に金貨を手に入れると、こんどは銀貨を捨て、ポケット、かばん、ぼうし、ブーツまでも金貨でいっぱいにしてしまう。
 火うちばこはどこにあると魔女にいわれて、兵隊は火うちばこをどうするのか、たずねるが、魔女は何もこたえない。兵隊はわけをいわない魔女におこって魔女の首を切り落としてしまう。
 金持ちになった兵隊は町でいちばんいい宿屋に部屋をとり、最上級の食事を注文し、新しいブーツと上等な洋服も買う。すてきな紳士になった兵隊は、たくさんの友人を持つようになり、王さまや、美しいおひめさまのことについても話を聞く。おひめさまはただの兵士と結婚すると予言されていて、そのため王さまはそれがいやでおひめさまを城の中に閉じこめているため、おひめさまにあった者は誰もいないという。

 兵隊は金持で多くの友人を持っていることを楽しんでいたが、あまりにも早くお金を使ってしまい、お金はやがてほとんど全部なくなってしまう。そのため彼は宿屋を出て、暗い小さな屋根裏部屋に住むことになる。友だちもきてくれなくなる。 ある寒い暗い夜、彼には部屋を照らすろうそくさえもなかったが、火うちばこを思いだし、火打石から火花を出すとすぐに、木の下で彼が会った最初の犬がでてきて、だんなさま、なにかごようですかと、犬がたずねるので、兵隊が「お金を持ってこい!」と叫ぶと犬は銅貨の袋を口にくわえてもどってくる。火うち石を2度打つと、銀貨の箱の犬が現れ、3度打つと、金貨の箱の犬があらわれ。3匹ともみんな、彼のしてもらいたいことは何でもしてくれる。また金持になった兵隊は宿屋にもどり、ふたたび最上級の食事を注文し、立派な洋服も着ることができるようになる。

 兵隊はお城に閉じこめられているおひめさまに会いたいと思い、火うち石を打ち、犬の力をかりて、おひめさまを城の中からつれだし、眠っているおひめさまにキスをする。しばらくしてから、犬はおひめさまをつれて、おしろにもどる。翌日、おひめさまは、王さまとおきさきさまに不思議な夢の話をし、犬が背中に私を乗せて、連れ去った夢を見、兵隊が私にキスしたと話す。翌日、兵隊は、また犬におひめさまを迎えにやるが、今度は侍女がついてくる。侍女は犬がおひめさまを家に連れていくのを見ていて、翌朝、王さまの家来がたやすくその場所をみつけるためにその家にチョークでドアに大きな十字を書く。しかし、犬は十字を見ると、チョークを持って町じゅうのドアに十字のしるしを書いてしまうので、王さまの家来は、兵隊をさがしだすことができない。

 おきさきは、ふくろをつくって、その中にそばの実を入れ小さな穴をあけおひめさまの背中にくくりつける。犬がおひめさまさまを連れにやってきたとき、そばの実がこぼれ、兵隊の家は発見されてしまう。

 そしてすぐに首つりされることになる。火うち箱を家においてきた兵隊は、靴屋の男の子に残された銅貨をあげるからといって、火うち箱を持ってきてもらう。いよいよ首になわがかけられそうになったとき。最後の願いに、パイプをいっぷくすわせてくださいといって、火うち石を1回、2回、3回と打つ。すぐに3匹の犬がそろって現れ、裁判官や大臣にとびつき、王さまとおきさきも空にほうりなげてしまう。人びとは兵隊に拍手を送り、「あなたが王さまになってください。そしておひめさまと結婚してください」とさけぶ。そこで、兵隊はおひめさまと結婚することになる。

 大分くわしくなったが、ブレグバッドが原作にどのていど手をいれているかわからないので、以下は独断。

 出だしの部分は、昔話の特長があらわれ、三匹の犬があらわれる。

 魔女からせっかくの贈り物をいただきながら、あっという間に魔女を殺してしまうが、これにはとくに意味がないと考えたい。魔女がほしかった火うちばこはそれほどのたからであったのか。魔女というからにはこれがなくても自分でなんでもできそうなものだが。またなぜ木の下に魔女自身がはいっていけなかったのかもよくわからないところ。

 チョークで町じゅうのドアに十字のしるしをつけるシーンはアラビアンナイトの「アリババと40人の盗賊」にそっくり。
 最後に「王さまになってください」と人々がさけぶシーンがあるが、この王さま、王さまでいたときあまり善政はしなかったということでしょう。

 お金持ちになった兵隊が、お金がないことがどんなにつらいものか知っていて、まずしい人たちにお金をあげるところが、救いか。