運命の王子/作・絵:リーセ・マニケ 訳:大塚 勇三/岩波書店/1984年初版
古代エジプトのパピルス文書にかかれたものを、エジプト学者である作者が再話?したものという。
もっとも、もとのパピルス文書は途中でやぶれていて、最後のほうは作者が、当時のエジプトを再現しているというのですが、とにかく今から3千年以上も前の話というので興味津々でした。
絵は横向きの人物が特徴で、まるで古代エジプトの壁画をみているようです。
途中、あれっと思うところもあるのですが、昔話のおなじみの要素がでてきます。
子どもがいない王さまがでてきて、神さまにおねがいして、子どもがさずり、七人の女神が運命をさだめるのですが、「この子は、ワニかヘビかイヌにころされることになっている」といいます。
この出だしは、よく目にする昔話のパターン。
息子の先行きを心配した王さまは、王子を石の家に閉じ込め、いつも召使に監視させますが・・・。
しかし、運命がさだめられているなら、それまでは自分のやりたいようにさせてほしいと王子は、旅に出ます。
昔話は、若者が必ずといってもいいほど、旅に出るのが特徴。
やがて王子は、30メートルもの窓に飛びつき、王さまのむすめと結ばれます。
反対する王さまをなんとかときふせたむすめですが、心配なのは王子の運命です。
王子をころしたのは?
ハスの花から王子が再生するという幻想的なラストです。
数多くの昔話の一つとうけとめると新鮮味はないのですが、これが何より3千年前の話をもとにしているというので、昔話のルーツにつながっているかもしれないと思うと、大人にとっては興味がわくところです。