新版日本の民話57 埼玉の民話/根津富夫・編/未来社/1979年初版 2016年新版
青連寺と高坂の高済寺を舞台にした伝説。
青連寺にお化けが出るといううわさが広がり、二人の若い衆が本当か確かめにでかけます。
青連寺のある折之山は、数百年がたっているという松が百数十本も並んでいて、夜には真っ暗闇。
若い衆が、こわいもんみたさに近づいていくと、ブンブンと綿をくくる音がしてきます。
そこにには、行灯をとぼして、手ぬぐいをあねさんかぶりにした十七,八の娘がぼたんの花模様の赤だすきで綿くり機をくくっています。
娘が顔をあげてにっこりと笑うと、すうーと消えてしまいます。
化け物を退治してやると出かけたのは、弓の名人の岩次郎という男。
綿くり機をくくっている娘に、弓をはなつと胸板を打ちぬきますが、娘はニコッとわらって消えてしまいます。
二度目も同じことが。
三度目に矢を射るとき、日ごろから進行している八幡さまに心を込めてお祈りすると、<迷わず、あんどんを射よ>と聞こえたようなきがして、そのとおり、行灯を射抜くと、「ギャー」という声がしたとたん、娘も綿くり機も消えてしまいます。
次の日、村のひとたちは、高坂の高済寺の裏山にでっかい古狐を見つけます。 古狐は胸から背中まで月十た矢をつけたまま死んでいました。
寺があると墓地。
夜の墓地はお化けがでるのには格好な場所ですから、寺の数ほど同じような伝説があってもおかしくありません。
青連寺は第二回目の元寇の年、1281年の創建といいますから由緒あるお寺です。