ある おはなし会のプログラムに「セロひきのゴーシュ」がありました。宮沢賢治の作品は、いつか話してみたいと思って、「セロひきのゴーシュ」は、これまで何回も読み直していたもの。しかしまったく歯が立たない状況です。
ある方が「注文の多い料理店」をレパートリに入れているのを聞いて、そういう域までいくには遠い道のりのよう。
宮沢賢治の「セロひきのゴーシュ」は、絵本だけをみてもさまざまの出版社から発行されています。手元にあるのは、絵:茂田井 武/福音館書店/1966年ですが、そのほかに発行されているものをピックアップしてみました。ピックアップしたからどうということはないのですが・・・。
絵・植田 真/あすなろ書房/2015年
画・小林 敏也/好学社/2014年
絵・さとう あや/ミキハウス/2012年
影絵・藤城 清治/講談社/2012年
絵・佐藤 国男/さんこう社/2009年
絵・いもと ようこ/金の星社/2005年
絵・ささめや ゆき/岩崎書店/2005年
絵・小林 敏也/パロル舎/1995年
絵・司 修/冨山房/1986年4月
このほかに全集もあり、単行本、文庫本も加えると相当なものになりそうです。
賢治さんが亡くなる前にもっと出版されていたらとあらためて思いました。
ディック・ウイッティントンとねこ/マーシャ・ブラウン・再話・絵 まつおか きょうこ・訳/アリス館/2007年初版
マーシャ・ブラウンというと「三びきやぎのがらがらどん」ですが、この絵本が出版されたのは1950年、日本版は2007年ですが、はじめて訳されたのでしょうか。
天涯孤独のディックは、ある日ロンドンへ。
立派な都と聞いていたロンドンも通りは泥だらけ。
金持ちの商人フィッツウオーレン氏の家で働くことになりますが、この家の料理女から酷使されどうし。
おまけにディックがすんでいる屋根裏部屋はねずみだらけ。
女の子から猫を買って手間ひま惜しまず大事にすると、猫はねずみを追い払ってくれたので、ようやくぐっすり眠ることができるようになったディック.
ある日、フィッツウオーレン氏は、召使を集め、商いの航海に何か選んでだすようにいいます。
だすものがないディックにアリスお嬢様が手をさし伸ばしますが、フィッツウオーレンの言葉で、猫をだすことに。
この猫ののった船は、ねずみに悩まされていた国へ。
この国で、猫が大活躍。すっかり喜んだ王さまは、船に積めるだけの金や銀、宝石をくれます。
ヨーロッパに、こうした昔話がみられるのは、それだけねずみに悩まされていた反映でしょう。
「ハーメルンの笛吹男」にも、ねずみに悩む町がでてきますが、この話は13世紀。
14世紀ヨーロッパ人口の3割がなくなったという黒死病もねずみが原因だったといいますから、昔から因縁が深かったようです。
絵は版画?でしょうか。落ち着いた色合いです。
・ノルウエーの「4シリングはいいおかね」(大人と子どものための世界のむかし話12 フィンランド ノルウエーのむかし話/坂井玲子・山内清子・訳/偕成社/1990年初版)も、猫でねずみを退治する昔話。
とても寒い日、山へたきぎをひろいにいった少年。
大きな束を背負って帰る途中、大きな白い石が、まるで誰かが背中をまるめているようで寒そうだったので、自分の上着を石にきせてやります。
とても貧しかった母親は、理由を聞いて、上着をとりもどすよう少年にいいます。
少年が石のところにいってみると、石に向きがすこしかわっていて、石の下には小箱がありました。
小箱には銀貨がいっぱい。ぬすんだお金にちがいないと思った少年は、中身を池に捨てますが、4シリング貨が一枚だけ水の面にうかびます。これだけは悪くないから沈まないんだと思った少年は四シリング貨を家に持ち帰ります。
母親は、他のお金を持ち帰らなかった少年を家から追い出してしまいます。
少年は、やがてある商人の家で、炊事用の水と薪を運ぶ仕事をします。
ある日、商人が外国にでかけることになり、使用人一人一人からお金をあずかり、ほしいものを買ってきてあげようといいます。
少年は4シリング貨で買えるものならなんでも結構と、商人にたのみます。
外国にいった商人は、使用人に約束したものを買いますが、少年のことは忘れていました。そこへネコ一匹を入れた袋をもった女がやってきます。海にすててお払い箱にするというので、商人は4シリングでそのネコを買います。
商人がのった船は嵐にあい、見知らぬ土地につきます。そこで宿屋の食堂にいくと、それぞれの席にシラカバの枝を束ねたものがおいてあります。
商人は何に使うかわかりませんでしたが、食事がテーブルに運ばれてきたとき、その使い方がわかります。
ねずみを追い払うのに使うものだったのです。商人が船からネコを連れてくると、ねずみは穴にかくれ、客は静かな食事を楽しむことができました。
みんなは猫をしらず、どうしてもその動物を売ってくれと商人に頼み込みます。商人はさんざんしぶったあげく、百ダラで売ることに。
不思議なことはこのあとも続きます。売った猫が船にまいもどっていたのです。
このあと船は2度も嵐にあい、商人は、宿屋の食堂に入りますが、そこでもねずみ。
二度目は二百ダラ、三度目は三百ダラで、猫を売ることに。
商人は三百ダラのお金を、自分のものにしようとしますが・・・・。
ここででてくる母親は、多分後家ですが、とくにそれにはふれず、「まずしい女がむすことふたりでくらしていました」とはじまります。
後家ではじまる訳にすこし違和感がありましたが、このでだしは納得できます。
その後、ネコがどうなったのかは、さだかではありません。
タイトルを「正直な四シリング」「まともで正しい四シリング銀貨」としているものもありました。