パナンペ ペナンペ むかしがたり アイヌのウゥエペケレより/中村欽一・作 西山三郎・絵/童心社/1992年
パナンぺじいさんが、かみさまにおいのりしてから、さかなを とりはじめると さかながいっぱいとれた。そこへやせこけた子犬があらわれキュンキュンとないたので、じいさんは まるまるふとったサケを わけてあげた。サケをかついで 歩き出すと、なかなか家につかない。すると、とつぜん金と銀の子犬が とびだしてきて ついていくと 大きな家。いぬの村でした。
パナンペが サケをあげたいぬは、村長の娘で、ごちそうや踊りで大歓迎。
帰り際に銀の子犬をおみやげにもらい、家に帰ると いぬが歌うように ばあさまが やさしく指で、三度ポン、ポン、ポン、たたくと、いつのまにか 子犬の 姿は見えなくなり、部屋には たくさんのたからもの。
これをみていたペナンペがおなじように村にいきますが、いぬにはサケのしっぽをすこしやるだけ。怒鳴るわ、ごちそうを 食い荒らすわ 酒を飲みまくったので さんざんな目にあいます。
さてこの国に、海を越えてさむらいたちがやってきて、みつぎものをとられ、アイヌのくらしはくるしくなりました。そんなある日、パナンペが、神さまにおいのりしてから、甘い、コクワの実を 夢中で 食べていると、ついうっかりと、ことりも 呑み込んでしまいます。ことりは、「おなかのなかは あったかだ わたしはここにすみましょう」と、なきました。
ことりの神さまが、じいさんの、おなかのなかに、すみついだぞ!という うわさが 広がり、毎日、毎日村人や遠くの人が、ことりの なきごえを 聞きにやってきました。評判を耳にした殿さまにも、ことりのうたをきかせたパナンペは、大首領の位を授けられました。
この大首領というのが曲者でした。みつぎものを これまでの三倍にふやすことに利用されたのです。
殿さまにだまされたパナンペは、ブクサラ(行者にんにくをほしたもの)をしこたま食べると「おらのことりのなきごえをきいたもんはな、じぶんのものを ひとにやりたくなるんだ」といい、殿さまの前で、特大の屁をぶっぱなしました。
パナンペは、アイヌのことばで「川下のもの」、ペナンペは「川上のもの」を意味します。
「隣の爺さん型」と「鳥のみ爺」をあわせたような話。とちゅう手書き文字で、謡うようなセリフも味わい深い。いぬの村からかえる場面。
「アンナホーレ ホレホレ おなごりおしいけど これでおわかれいたいます。
あなたにしあわせが ゆきのようにつもりますよう
アンナホーレ ホレホレ あなたのよろこびが ひかりとなって そそぎますよう。
アンナホーレ ホレホレ おわかれは つらいけど またおめにかかります
アンナホーレ ホレホレ アンナホーレ ホレホレ」
作者の詩に、丸山亜季曲の「アンナホーレ」がのっています。