どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

子どもの本で平和をつくる

2022年10月25日 | 絵本(外国)

    子どもの本で平和をつくる/キャシー・スティンソン・文 マリー・ラフランス・絵 さくまゆみこ・訳/小学館/2021年

 

 戦争ででた瓦礫が散乱する町。

 パパが戦争で亡くなり、いつもひもじいおもいをしていたアンネリーゼと弟のペーター。市場にいくとオレンジの皮がおちていました。おなかがぐうぐうなったアンネリーゼでしたが、それでも泥をきれいにはらって、ペーターにわたしてあげました。

 そのとき、ちかくにある大きな建物に、人々がならんで入っていくのが見えました。食べ物かなにかもらえるのかもと、ふたりはその列にならびました。入ってみると大広間には数えきれないほどの本がならんでいました。アンネリーゼはうれしくなり、それから悲しくなりました。よく本を読んでくれたパパが亡くなっていたのです。

 アンネリーゼとペーターは、つぎつぎに本を見ていきましたが、入ったとき、大人たちに話していた女の人から、閉める時間だといわれてしまいます。

 つぎの日、市場のお店の人がよそ見している間に、ぶらさがっているソーセージをひとつぐらいもらってもいいのではないかとおもったとき、弟のペーターから「きょうも、本のあるとこにいける?」といわれ、アンネリーゼはハッとして 手をひっこめました。泥棒をしたらママが悲しみます。アンネリーゼは、本をみていれば、おなかがすいているのも、わすれられるかもしれないと、昨日見た本が並べられている大広間にいきました。  

 広間では、きのうの女の人が、子どもたちに絵本を読んであげていました。牛が闘牛士の望むような戦いをしないで、花の咲く丘にもどる絵本でした。それからピノッキオやハイジ、ピッピの本なのことなども話してくれたのです。帰り道、アンネリーゼは、パパもママもいないひとりぼっちのピッピのことを考えていました。

 その夜、ママが親切な農家から野菜をいっぱいいただき、たっぷり食べることができたアンネリーゼは、弟に寝る前のお話をしたあと、夜おそく目をさまし、月の光にてらされた瓦礫のあいだに咲く花や木をみながら、戦争で壊れた図書館のまわりをきれいにしようとおもいながら、眠りにつきました。


 第二次大戦後まもなく、偶然図書の展示会にはいったアンネリーゼという少女が、本の読み聞かせから、前にむかって歩きはじめるところまでが描かれています。

 本文だけではよく理解できなかったのですが、物語の図書の展示は、1946年イエラ・レップマンという人が20の国へ呼びかけ届いた本を、ミュンヘンの「ハウス・デア・クンスト」で開催した実際の図書展といいます。

 1945年イエラ・レップマンは、「この混乱した世界を正すことを、子どもたちからはじめましょう。そうすれば、子どもたちがおとなたちに、すすむべき道を示してくれるでしょう」と、自分の考えを手紙にして20の国におくりました。その後、1949年にミュンヘンの小さな家に、はじめて国際図書館が誕生します。そののち国際児童図書評議会(IBBY)が設立されます。

 戦後の混乱期に こうした活動をいち早く行った原点には、何があったのでしょうか。

 訳者の さくまゆみこさんは、IBBYの支部のJBBY(日本国際児童図書評議会)の会長とありました。