ねえねえ、きょうのおはなしは・・/大塚勇三:再話・訳/福音館書店/2024年
ロバが小舟にのったのは、キツネにさそわれてからでした。小舟には、ロバのほかオオカミものっていて、オリーブの実を集めてきて、小舟につみこんでいました。
キツネは、小舟が海のまんなかまでくると、「この先の旅で、みんながみんな、生きて帰れるかどうか わかりゃしない。だから、とにかく、これまで自分がおかした罪をちゃんと話して、神さまのおゆるしをねがっておこうよ」といいました。
キツネは、「ニワトリを二、三羽ぬすみましたし、ちっちゃな生き物をいろいろ食いました。」、オオカミは、「俺は、ヒツジを二、三びきに、ヤギと子牛を、なんびきか、くったなあ」、ロバは、「サラダにするレタスの葉っぱを一枚、口にくわえました。その葉がおいしかったので、すっかり食べてしまいましたっけ」と話しました。するとキツネもオオカミも、「レタスにオリーブ油も素もかけないで食べるなんて、食事とは言えない。きみが、そんな、とんでもないことをしたんじゃ、おれたちはみんな、この旅で、おぼれ死んでしまう。そう、きみの罪は、ほんとに大きいから、おれたち、きみを食っちまわなけりゃならないな!」と、いいだしました。
どんなことであれ、ロバを食おうとして小舟にさそったのでした。
しかし、ロバは、「お父さんがなくなるとき、ぼくの後ろ足の、ひづめのところに、なにか書いておいたんですよ。だからオオカミさん、それを読んでくださいな。そうすれば、お父さんが、何を書いたかが、ぼくにはわかる。そしたら、そのあと、ぼくを食ってくださいよ」といって、後ろ足をあげました。
オオカミが、書いてあることを読もうとして、首をのばしたとたん・・・。