千年ぎつねの秋冬コレクション/作・斉藤洋 絵・高畠純/佼成出版社/2001年
「千年ぎつねの赤い山」「千年ぎつねのクリスマス」の2話。秋冬なので春夏バージョンがありそう。
キツネは、人間をばかすかと思えば、千年ぎつねは ヒーローのような存在。山火事を消したかとおもえば、サンタクロースは、本当にいるんだと、夢をあたえてくれる存在。
千年ぎつねは、二百年くらいいきている二百年ぎつねや、三百年くらいいきている三百年きつねより、けむりをださず、いろいろなものに ばけることができます。
木の葉っぱをお金にかえても、すぐに ばれてしまうのは、二百年ぎつねや、三百年きつねの未熟なしわざ。千年ぎつねがやると、葉っぱを、お札にかえても、十年くらいたたないと、もとの葉っぱにもどりません。これが千年ぎつねの”十年ばかし”。
千年ぎつねは、オートバイのハンドルを、まるい輪っかにはしませんし、バスをバックで走るなんてことはありません。
・千年ぎつねの赤い山
山火事で村の人がおおさわぎ。ほうっておくと山の木が全部燃えてしまうほどのいきおい。千年ぎつねが、三百年ぎつねに、消防士にばけて、村人たちのてつだいをしろというなり、大きなワシにばけてどこかへいってしまいました。
町に連絡をしましたが、消防車が一台もきません。村の子どもたちは、ひとまず小学校に避難し、大人たちは、村に火が燃えうつらないように、木を切り倒しています。
その時、龍がもえている山の上までくると、さけび声をあげました。「キエーッ!」。たちまち黒い雲が東西南北からあつまり、ものすごい勢いで、雨がふりだしました。山火事は、あっというまにきえました。
つぎの日、三百年ぎつねが、千年ぎつねにたずねると、湖にいって、水をのんできたという。
三百年ギツネたちは、千年ぎつねから おしかりをうけました。なぜって、いまの消防士の格好がわからず、町火消し、つまり江戸時代の格好をしていたのです。
・千年ぎつねのクリスマス
十二月のある日、千年ぎつねは、そろそろばけようと思っていましたが、二百年ぎつねや、三百年ぎつねが、千年ぎつねの 化け具合のようすをさぐっているので、なかなか機会がおとずれません。
千年ぎつねが おじいさんの格好で、町の広場にやってくると、ふたりの男の子が、サンタクロースがいるか、いないかで話しているのがきこえました。頭にひらめいた千年ぎつねは、イヌにばけている三びきのきつねを、だれもいない公園にひっぱっていくと、トナカイとそりにばけさせました。もっとも、三びきのきつねは、ウマとウシとトラックにばけたので、やりなおしを させましたが・・。
千年ぎつねはサンタクロースのすがたになり、そりにとびのりました。雪の上をすべりはじめると、それをみた男の子が、「やっぱりサンタクロースはいるんだ。」「あれは、おみせの せんでんだよ。にせもののサンタクロースさ。どこかのおじさんが、サンタクロースに ばけているんだ。」
それを聞いて、千年ぎつねはむっとして、二頭のトナカイとそりといっしょに、ふわっとうかびあがり、地面からはなれました。二頭のトナカイがひくそりは、サンタクロースをのせて、「キャッホーッ!」と、空高くまいあがりました。
それをみた町の人も、「わーっ。ほんもののサンタクロースだ!」「サンタクロースは、ほんとうにいたんだ!」と、おおさわぎ。
これだけではおわりませんでした。
石ころを おもちゃやぬいぐるみにかえて、子どもたちの まくらもとにおいていったのです。プレゼントが 石ころにもどるのは、子どもたちが、おおきくなってからです。なぜって、千年ぎつねは、”十年ばかし”をつかったからです。