ウズベクのむかしばなし/シェルゾッド・ザヒドフ・編訳 落合かこ ほか訳/新読書社/2000年
余命がないことを悟った一人の男が、三人の息子に、死んだら三日の間、墓でねずのばんができるか たずねました。上の二人は、できないとこたえますが、末の息子は、父親の墓にいき、見張りをはじめました。
一日目の真夜中、彼の目の前にみごとな鎧と甲を背中につんだ白馬があらわれました。白馬は父親のもので、主のお墓におまいりにきたのです。そして、自分のたてがみの毛を何本か引き抜いて、助けが必要だったら、焼くようにいいました。
二日目の夜、こんどは黒い馬があらわれ、おなじように、たてがみの毛を何本か抜いて、助けが必要な時、焼くように言いました。
三日目は、赤茶色の馬があらわれ、四日以降は、もうなにもあらわれませんでした。
三人兄弟は、牧童としてやとわれましたが、二人の兄が、家畜の群れからいっぴきをぬすんで、かくれて売り飛ばしたので、村からおいだされてしまいました。
あるとき、兄たちが町へ出かけると、王さまが、「馬かラクダか、またはロバで、あずまやの階段をのぼり、そこに座っている王女の持っているコップの水を飲み、王女の指輪をとることができたものには、王女と結婚させる」というおふれをみました。階段は四十段ありました。たくさんの若者や大人たちがやってみましたが、おおぜいの人がころげおち、おおけがをするばかりで、王女のところへたどりついたものは、ひとりもいませんでした。
ここから先は、昔話のパターンです。ただ馬が三頭いますから、その出番があります。白馬は、あと二段のところまでで、そのさきにはいけませんでした。赤茶色の馬は、三十九段まで。黒い馬は、王女のところまでのぼり、若者は、王女から水のはいったコップを受け取り、それを飲み干すと、王女の手から、指輪を抜き取りました。
王さまは、若者をほめたたえ、すぐに結婚式の準備をはじめるよう、大臣に命じました。
兄さんたちは、若い騎手が弟と知ってびっくりしました。どこで馬を手に入れたかたずねられた末の息子は、父親の遺言どおり、墓で見張りをしていた三日の間に、つぎつぎとあらわれたことを話しました。兄さんたちは、かなしく後悔するばかりでした。
結びは、「父親のいうことを聞かなかったものは、こうしたかなしい結果になるのです。」
三人兄弟が出てきても、上の二人は、弟に対して悪さをしません。
さらに、「墓を見守る」、それも一昼夜というのは、日本の昔話にはみられない。