どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

しっぺいたろう

2021年07月13日 | 絵本(昔話・日本)

      しっぺいたろう/香山美子・文 太田大八・画/教育画劇/2000年

 旅人のぼうさんが、ある村にやってきます。

 とりいれも無事すんで、秋祭りの支度の時期なのに、村の人々は みんなうつむいて、しおしお。ぼうさんがわけをきくと、山の社の神さまに、娘を差し出さなければという。

 ぼうさんが、ばけもののしわざにちがいないと、社に出かけ、かくれてみていると、ざざざと 山が揺れるような 風が吹いたと思うと、おおきなものが 木の上から ふってきました。ばけものでした。

 ばけものは、”ふるいけ ふるさわ ふるかいどう たんごは あまの はしだてで これで こっきり わしらの ことは たんばのく にの しっぺいたろうにゃ きかせるな”と歌い、そろって おどりはじめました。

 ばけものたちは いばっているが しっぺいたろうという ひとが よっぽどこわいとみえると思ったぼうさんは、娘を人身御供にださずにまっているようにいって、丹波の国へいって、しっぺいたろうを 捜し歩きました。ところが、だれにもしらないといわれ、つかれでうとうと ねむっていると だれかが 呼ぶ声。

 わけをはなし、じいさまとまごから しっぺいたろうを かりると ぼうさまは むらへ もどりました。

 なかなかぼうさんがかえってこないので、おとうと おかあが なきなき 娘を つれていこうとしたとき、しっぺいたろうとぼうさんがやってきました。

 しっぺいたろうは、化け物どもとたたかいます。

 むらのひとびとが、ようすをみにきてみると、そこにはおおきな ひひが さんびきもたおれていました。窮地を救われたみんなでしたが、坊さんと しっぺいたろうの姿をみることは できませんでした。

 

 坊さんと しっぺいたろうが、何も告げずに去っていく最後は、まるで映画のヒーローのようです。

 「しっぺいたろう」は、じつは 仔牛のようにおおきな白い犬。

 しっぺい太郎伝説の原典は「今昔物語」にあって、山犬(狼)信仰ー農作物の守護神ーと関わりがあり、青森から鹿児島までの各地に広く伝わっているといいます。

 

・しっぺい太郎(茨城のむかし話/茨城民俗学会編/日本標準/1977年)

 絵本の方が先になりましたが、茨城におなじ話がありました。こちらは坊さんではなく、役人。

 化け物が出るというお宮で”丹波の国のしっぺい太郎に、かならずこのこと聞かせるな。ドットコドのド。ドットコドのド・・・。”という声を聞いて、丹波の国へいって、しっぺい太郎を借り受け、村へもどった役人。

 人身御供の娘の代わりに、箱の中に役人としっぺい太郎がはいって、化け物のところへ。

 化け物は、でっかいサルでした。

 茨城から丹波(京都)へいくのも大変そうですが、すぐに着くというのもお話の世界です。

 原典が今昔物語だと、もっと各地にありそうです。

 

・しっぺい太郎(静岡のむかし話/静岡県むかし話研究会編/日本標準/1978年)

 おぼうさんが、「こよいおらっちにの このことは 信州信濃の光前寺 しっぺい太郎にゃ しらすなよ」という、化け物どもの歌を聞いて、信濃で しっぺいたろうを借りてきて、化け物と たたかいます。ただ、太郎は、たたかいのあと 息をひきとります。


この記事についてブログを書く
« セミのこえ 梅雨明け? | トップ | くれよんのくろくん »
最新の画像もっと見る

絵本(昔話・日本)」カテゴリの最新記事