ハボンスのしゃぼん玉/原作・豊島与志雄 脚本・稲庭桂子 画・桜井誠/童心社/1992年(16場面)
むかし、トルコのハボンスという手品師が、男の子を連れて、国中を歩き回り手品や曲芸をやっては、おかねをもらっていました。子どもは、お父さんの手品が大好きでした。
あるとき、ながいながい雨がふりつづき、ふたりはしかたなく宿屋にとまっていましたが、子どもが病気になってしまいました。いやな雨は しとしととふりつづき、子どもの病気は悪くなって、死んでしまいました。
ひとりぼっちになったハボンスは、なにをするのもいやで 死んでしまいたいと思いましたが ふと、いつかはなしに聞いた魔法使いをたずねて みようと 思いました。ハボンスは、魔法使いに会って、子どもをいきかえらせてくれるように たのもうと おもったのです。
何日も何日も山の中を歩き回り、とうとう森の向こうに火がちろちろと 燃えているのを みつけました。洞穴には、魔法使いのおばあさんがいました。ハボンスは、子どもを生き返らせてくれるよう頼みますが、魔法使いは、それはじぶんにもできないと いいました。すっかり 力を おとしたハボンスは、その場で死のうとしますが、かわいそうにおもった魔法使いからいわれ、その日は魔法使いのところへ泊りました。
つぎの朝、ハボンスは、吹くと 望みのものがあらわれるというシャボン玉を 手に入れます。銀の鉢で、むくろじの実を 鉢にとかしてできるシャボン玉でした。しかし、このシャボン玉は、むくろじの実がなくなると、じぶんのからだも、あわになってきえてしまうというのでした。
ハボンスは、むくろじの実があるかぎり、たくさんの人々をよろこばせてやろうと、都のあちこちで、見物人の「すずめ」「花」などの要望のものをだして、大喝采をあびます。
そのうち、むくろじの しるが なくなってきました。ハボンスが、おおきなシャボン玉をプーッとふきあげ、「わしの子に なあれ。わしの子に なあれ」というと、ハボンスの子が、うれしそうな顔で、そらに のぼってゆきました。ハボンスは、広場でシャボン玉を あげ、あつまったお金を 貧しい人々に わけてやりました。
評判は、お城にもとどき 王さまから「おまえに、ずっと この城に いてもらいだが・・」といわれますが、ハボンスは、あしたかぎり・・といい、あした広場に おいでくださいといいました。
つぎの日、広場に集まった人々の前で、鳳凰と龍を出現させると、鳳凰と龍は、からみあうようにして、そらに のぼってゆきました。それから、シャボン玉の うちどめです。
ハボンスは、子どもの姿のシャボン玉を だすと もうひとつ おおきなシャボン玉が あらわれました。人々が気がつくと、ハボンスの姿は見えませんでした。
子を思う親の気持ちがあふれた紙芝居。
しかしいつみても、手品には驚かされます。タネを あかされると、なるほどとなりますが・・。