クラクフのりゅう/アンヴィル奈宝子/偕成社/2020年
ポーランドの昔話の再話で、昔ポーランドの首都だったクラクフにある、ヴァヴェル城にまつわるお話。
このお城の地下に、いつのころからか住むようになった青いりゅうは、どんどんどんどん大きくなって人や家畜をパクパク食べてしまい、ひとびとから怖れられていました。
困った王さまは、「恐ろしいりゅうを退治したものは、王女と結婚できる」というおふれをだしました。
強そうな男達百人が退治にでかけますが、あまりの恐ろしさに逃げ出す始末。ようすをみていたお城に住むかしこい靴職人のドゥラテフカが、りゅうの退治にのりだします。
昔話の「おふれ」は、本人の意向をとわず、結婚できるというのが多いのですが、ちゃんと王女の進言という形で、本人の意思を尊重しています。また、ドゥラテフカは、リサイクルした にせもののヒツジのおなかに硫黄をしこんで退治しますが、この硫黄は、着火剤(マッチの先端)としてつかわれていたのではないかと、リアリティもあります。
さらに、ドゥラテフカは、王さまになっても、おおぜいの家来のために、りゅうの皮で靴づくりをする とっても働き者の 王さまで たんに「しあわせにくらしました」となっていないのも味のあるおわりかたです。
悪役のりゅうが、とてもかわいらしく(とくに、目がチャーミング)えがかれているので、憎めません。またお城などの俯瞰図も目をひきます。