フィリピンの昔ばなし/カラオの洞窟/荒木博之:編・訳/小峰書店/1989年
日本の昔話には、馬が出てきても空を飛ぶという発想はなさそうです。
この話では、白、黒、赤い馬が空を飛びます。
この馬が、お城の庭の木の葉を食べると、きまって王さまが病気になっていました。
誰のせいかようすを見に行ったのは、三人の王子。
上の二人は12時を過ぎると、眠気がおそってきて、誰が、木の葉が食いちぎったのかわかりません。
末の王子ファンはナイフとレモンをもっていき、眠気におそわれると、ナイフで指を切り、その上にレモンをたらし、一晩中起きていることができたのです。
13時には白馬、14時には黒馬、15時には赤馬がやってきて、木の葉を食いちぎろうとしますが、ファン王子は、そのたびに馬をみごとに乗りこなします。馬はへたばって、「ご用のあるときは、いつでもお呼びください。すぐにとんでまいります」といって、天空のかなたにとんでいきます。
そして、王さまの病気は、すっかりとよくなります。
それから何年かたち、「良い嫁をみつけて、わしを安心させてくれ」という王さまの言葉で、三人の王子は妃を探すたびにでます。
上の二人が馬小屋の立派な馬で駆け出し、馬小屋に残されたのはやせた老馬だけ。それでも白馬、赤馬、黒馬のおかげで、ファン王子は兄たちにおいつきます。
ある一軒家で宿を頼むと、おばあさんから、「婿を探しているという美しいお姫さまが、城の塔を馬で飛び越えた者のおよめになる」ということを聞きますが、これまで誰も成功したものはいないというのです。
上の二人の王子が挑戦しますが無駄でした。ファン王子は、白、黒、赤の馬のおかげで城の塔を一気に飛び越えたのはいうまでもありません。
三人の王子が出てくると、上の二人に残酷ともいえる結末がおおいのですが、どこか遠くの国にかくれてすんでいるうわさがきこえてきたというおわりかたです。
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