熊本のむかし話/熊本県小学校教育研究会国語部会編/日本標準/1973年
正直で、信仰が厚く誰からも信頼され、おまけに村一番の力持ちの幸助どん。
朝早く、馬を買いに田浦にへでかけた幸助どんが、とちゅう かっぱがでるという君が淵をとおると、どこからか自分の名前を呼ぶ声。暗闇に目を凝らすと、川の浅瀬に、赤ん坊ほどの怪物がずらりいた。
うわさにきいたかっぱだなと思った幸助どん。弱みを見せると、つけこまれて淵の底に引きずりこまれてしまうと、「馬を買ってきた帰りに、相撲を取ってやろう」と約束します。
幸助どんが、ねだんも手ごろでいい馬が手にはいったので、祝いの酒を飲むうち、思わず時を過ごしてしまい、君が淵のそばにきたときには、日もとっぷり暮れてしまった。かっぱとの相撲をとるのを忘れていた幸助どんが、かっぱから声をかけられ、相撲をはじめます。
はじめるまえに、かっぱの頭のさらに、手をつけないこと、ひとりずつ相撲を取ることを約束して、人間とかっぱの力比べがはじまった。
幸助どんは、つぎからつぎと かっぱを君が淵に投げ込みますが、新手があとからあとからやってくるので、「おまえたちもなかなか強い」と、かっぱの強さを認め、勝ち負けなしの引き分けを提案すると、かっぱも、幸助どんの強さを認め、みんな水の中に飛び込んでしまった。
かっぱとの力比べで、からだじゅうが痛みだし、手をやってみると、べったりと血がついている。早く治療をしようと、ちかくの西宝寺へ急ぎ、わけを話すと、坊守さんが、お仏飯を仏壇からおろし、それを傷口にぬると、不思議に痛みが薄らぐことに。
かっぱは とくべつ悪さをすることなく、力比べをしたいという存在。人間の強さを認めるいいところもありました。