ばらいろのかさ/アメリー・カロ・文 ジュヌヴィエーヴ・ゴブドー・絵 野坂悦子・訳/福音館書店/2019年
アデルのカフェ「みずたまエプロン」は、風が吹きつける海辺の村の真ん中にあって、まわりには家が何軒かならんでいます。
アデルのカフェは、このへんでただ一つの店。
水曜日は、八百屋のリュカが、ちかくの人たちが買えるように果物や野菜をならべます。土曜日は、映画をみせる日、ほかの日も、面白い集まりがあります。
リュカは水曜日と日曜日、カフェに花をとどけていました。店のテーブルには、いつも花束が。
カフェは顔なじみのお客さんばかり。そしてこのへんにすんでいる人たちにとって、小さなあかりがいつもと灯っているのは、いってみれば、もう一つの家。アデルは店にやってくるお客さんのひとりひとりのことを、よく覚えていて、みんなに声をかけていました。
みんなのくらしのなかで、アデルは太陽そのもの、きらきら輝いています。
アデルがこまっていること、それは雨。なんにもやる気になれず、さむくて気持ちがしずみます。
ある日、店をしめる時間に床掃除をしていると、アデルはコートかけの下に、ばらいろの長靴をみつけます。長靴の底には、太陽。
一週間お客さんにきいても、だれのものかわかりません。
次の水曜日、店を閉めるときに入り口のコートかけに バラ色のレインコートがかかっていました。
次の水曜日、こんどは ばらいろのかさが。
水曜日といえば、リュカがやってくる日。雨の日、ばらいろのかさ、レインコート、長靴でリュカをおいかけると・・・。
アデルのカフェは、このへんでなくてはならないお店。若い二人のロマンスなのですが、こんなお店が過疎地にあったら、みんな元気になりそうですよ。