佐賀のむかし話/佐賀県小学校教育研究会国語部会編/日本標準/1977年
むかし、兄妹が、二番がくさん(二番目のおかあさん)に、マメをにていた大釜につきおとされ、かわいそうに死んでしまいました。ふたりは、裏薮にうめられましたが、そこから一本の青竹が芽を出してのびました。
ひとりの虚無僧が兄妹のうちの前で尺八を吹いていたが、はたと音が出ない。裏の竹藪を見ると、そこに一本のいい青竹があった。その青竹をゆずってもらい、尺八を作ってみたら、前よりもいい音が出た。
この虚無僧が京のはたごのまえで尺八を吹くと、京の町へ商いに来ていた兄妹のとうちゃんが聞くと、「おとっちゃん、京のすずりも何になろう。おとっちゃん、京のかがみも何になろう。まま母おそろし、チンチロリン。」とすすり泣きする、我が子の声が聞こえてきた。京のみやげに、兄はすずり、妹は かがみをほしがっていました。
とうちゃんはいそいで家に帰ったが、わが子の姿がみあたらない。二番がくさんがいうには、はやり病にかかって死んだという。四、五日たって、裏の竹藪にいってみると、根元から一尺ばかりのこっていた竹の中から、「おとっちゃん、京のすずりも何になろう。おとっちゃん、京のかがみも何になろう。まま母おそろし、チンチロリン。」と、京で聞いた虚無僧の尺八の音色と おなじ、わが子のすすり泣く声が聞こえてきた。
昔話には、悪役?のまま母がよくでてきますが、”二番がくさん”とよぶのは、はじめて。
継母があれば継父もありますが、こちらのほうはほとんど見たことがありません。同じように後妻があるなら後夫もありそうですが、こちらもみたことがありません。