ゆきの よあけ/いまむら あしこ・文 あべ弘士・絵/童心社/2012年
凍りつく寒さの しずまりかえった夜の森に、のうさぎの子が ひとりぼっちで雪の巣穴にうずくまっていました。
かあさんとは、恐ろしいキツネに襲われて逃げた夏のあの日から、ずっと離れたまま。そのときからのうさぎの子は、ひとりで生きてきました。
冬、のうさぎは、雪の巣穴で、寒さを逃れ、いつでも 逃げられるように 毛づくろいも覚えました。
ひっそりとしずまりかえった夜の雪の森に、かすかな音がしました。いたちが のねずみを 追いかける音。そして、ひそかに 雪を踏みしめ、忍び寄る足あと。キツネのにおい。木の上からは、フクロウがのうさぎの子を 狙っていました。
のうさぎの子は、死に物狂いで 雪をけります。けってけって、けりあげます。息の続くかぎり、雪をけり まえへまえへと、とびだしていきました。足を止めた そのときが、命の終わりなのです。
のうさぎの子が、キツネやフクロウの追跡から必死で逃げ、雪山のてっぺんにたどりついたとき、キツネは ふもとで荒い息をはき、たちつくしていました。
夜が明けると、遠くの山々が 茜色に染まり、みるまに、まばゆい 金色にかがやきます。雪は、しだいにしだいに、白さを取り戻し、朝のひかりに きらめきます。
雪の森が、目を覚まし、森じゅうの鳥が、さえずりはじめます。のうさぎの子は体中に力が みなぎってきます。うしろ足で思いっきり強く雪をたたきます。とん!とん! それは生きる喜びのばくはつです!
のうさぎの子と、キツネ、フクロウとの緊迫した戦いがつづき、やがて夜が明け、生きのびた喜び。さいごにほっとしましたが、夜になればまた戦いが続きます。のうさぎの鼓動がつたわり、躍動しています。
青を基調とした あべさんの絵に 魅了されましたが、キツネだけには はて? 首をかしげました。