どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

ふとっちょねこ・・デンマーク、ついでにペロリ、はらぺこねこ、おなかのかわ他

2019年02月01日 | 絵本(昔話・外国)


      ふとっちょねこ/ジャック・ケント・作 まえざわあきえ・訳/朔北社/2001年

 ねこがおかゆから始まり、なべ、おばあさん、スコホッテントット、スコリンケンロット、5羽のトリ、踊っている7人の女の子、ピンクのひがさをさした女性、牧師さんを次々に食べていき、最後はきこりがおなかをばっさり切ってみんな無事にでてくるという繰り返しが楽しい話です。

 「ついでにペロリ」(東京子ども図書館編・発行/おはなしのろうそく6)で語られる方も多いのですが、これは、松岡享子さんが訳されたもの。
 早口で食べたものを次々に繰り返えされるのを聞くのも楽しい話です。

 ねこのおなかが、だんだんふくらんで、そのまま空に浮かんでいくのではないかと心配になります。
 絵本では、最後に、ねこのおなかにはおおきなバンソウコがはってあって、笑わせます。

 絵本ではスコホッテントット、スコリンロットと人の名前ですが、「ついでにペロリ」では、つむじまがり・へそまがりと訳されて親しみやすくなっています。



          はらぺこねこ/文:木村由利子 絵:スズキ コージ/小学館/2007年

 もとは、「ふとっちょねこ」とおなじく、北欧民話よりとありますが、木村由利子さん文です。

 なにしろ飲み込むもののスケールが大きい。

 おかゆとお百姓さん、そのおかみさん、牝牛ときつねと、野ウサギとオオカミとクマと結婚式の行列、お葬式のご一同までは、まだいいのですが、食べるものに困って?月も太陽も食べてしまうという貪欲さ。

 ねこくん、月を食べたら夜真っ暗で困るし、太陽がなくなったらこの世は闇だよ、と突っ込みたくなりました。

 でだしが、おおぐらいのねこで、飼うのが嫌になったお百姓さんが、ねこの首に石をくくりつけて、川にしずめてしまおうと考えたことが発端です。

 「ふとっちょねこ」では、原因がでてこないので、こちらのほうがやや説得力がありそう。そうはいっても昔話の世界を楽しませてくれます。

 スズキコージさんの絵は、ねこがペ-ジいっぱいにえがかれ、迫力満点。天にとどくまでおおきくなったねこが、やぎの一突きで川に真っ逆さまの場面や食べられたみんながぞろぞろでてくる終わりが、スズキさんならではの世界です。


        おなかのかわ/瀬田貞二・再話 村山知義・絵/福音館書店/1977年


 1975年に月刊「こどもとも年中向き」として発行されています。

 再話とありますが、どこの国かはわかりませんでした。このあと「ふとっちょねこ」「はらぺこねこ」をみて、北欧の昔話からとられてるようです。

 表表紙と裏表紙を見開きにすると、ねこのおなかのあたりから鉄砲をかついだ兵隊がでてきています。

 オウムからごちそうによばれみんなたいらげたあと、オウムまでまるのみにしたねこ。

 おばあさん、うまかたとろば、おうさまとおきさきさま、へいたいもぞうもまるのみ。

 次に飲み込んだのはカニ二匹。

 ねこのおなかのカニ。「それじゃ うでを ふるおうか」と、はさみで おなかにじょきじょきあなをあけると・・・・・。

 ねこが「おなかのかわ」を一日かかって縫うというラストがなんともいえません。

 村山知義(1901-1977)演出の芝居は何本か見たことがありましたが、こんな絵もかかれていたのは新しい発見でした。

 遠くから見ても絵はよく見えるので、読み聞かせにも適しているようです。

 「赤ずきん」でもオオカミのおなかから、たべられた赤ずきんとおばあさんがでてきますから、子どもは素直にうけとめてくれそうです。

 それにしてもねこの胃袋の巨大なこと。

 このもとはアメリカのブライアントのお話集から鈴木三重吉が訳した物語を、瀬田貞二再話で村山知義が描いた絵本で、こどものとも年中向きとして新版が発行されたようです。


      どろにんぎょう 北欧民話/内田 莉莎子・作 井上 洋介・絵/福音館書店/1985年

 お爺さんがつくった泥人形が、網をもったおじいさん、おばあさん、桶と天秤棒を持った二人の娘、イチゴの籠を持った三人のおばあさん、三人の漁師、三人の木こりを次々に飲み込むお話。

 こちらも泥人形のお腹がどんどんふくらむさまがリアルです。

 木こりが助けてくれるのではなく、最後に助けてくれるのは・・・? 

 泥が主人公で、絵のタッチもその感じがよくでています。

 徳間書店から「ねんどぼうや」(作:ミラ・ギンズバーグ 絵:ジョス・A・スミス 訳:覚 和歌子)がでていて、こちらは「ぼうや」です。


      きんのつののしか/宮川やすえ・再話 井上 洋介・絵/復刊ドットコム/2017年

 不思議なことに同じような絵本に連続してであいました。
 内田 莉莎子さんの「どろにんぎょう」と同じ内容ですが、後半部が違います。

 復刊ドットコムから出版されていますから復刊されたようです。
 作者の方はなくなられていますが、ロバールスカ地方(ソビエト)の民話とあって、時代を感じさせます。そのうちソビエトってなに?となりそうです。 

 どろの勇士の歩き方が、がっぷがっぷ、飲み方も「ぱっくり」「くいっ くいっと」「ごっくり ごっくり ごくりっと」「ぐい ぐい ぐい」「がく がくっと」と飲み込むものによって表現が異なっています。

 どろの勇士に、あんぐり口をあけさせ、雄鹿が口に飛び込むと、角で おなかが、ばり ばり ばりんと やぶれ、おなかのなかから、じいさんとおばあさん、水の入った桶を持った二人の娘、イチゴの入った籠をもったおばあさん、漁師が魚を山のようにのせた船をかついで、出てきます。

 やがて二人の娘が、村中から金の粉を集め、シカの角に綺麗にぬってやります。角はお日さまの光をあびて、まばゆいほどに輝きます。それから立派なシカのことを金の角の鹿というようになります。


金のつのトナカイ(子どもに聞かせる世界の民話/矢崎源九郎/実業之日本社/1964年)

 北欧最北端の地方・ラブランドの昔話とありました。
 上記の「どろにんぎょう」(内田 莉莎子・作)と「きんのつののしか」(宮川やすえ・再話)の内容と同じですが、北欧のものらしく、トナカイがでてきます。


おそろしいクラトコ(世界のむかし話⑨ 森の精/バージニア・ハピランド 清水真砂子・訳/学校図書/1984年初版)

 絵本ではないのですが、チェコスロバキアの昔話。

 子どもに恵まれない老夫婦の黒いメンドリがひなをかえします。あまやかして育てたニワトリのクラトコは、大変な大食いで、おじいさん、おばあさんを飲み込んでしまいます。

 兵隊を銃剣もろとも飲み込んだクラトコが次に飲み込んだのはネコのコツオル。

 ネコがつめで胃袋の壁をひっかき始めると・・・・。

 「おそろしいクラトコ」では、飲み込むのが少ないようです。こうした昔話では、なんでも飲み込みますから、話し手によっては、もっと長い展開になってもおかしくありません。


なんて大食いのトラ猫(ノルウエーの民話/アスビヨルンセン&モー 米原まり子・訳/青土社/1999年初版)

 トラ猫がのみこんでいくものは なんと
  一鉢のポリッジ、一杯の脂汁、この家の主人、牛小屋のおばあさん、雌牛、牧場で枝を切っていた男、石積みの山にいたイタチ、茂みのリス、忍び足のキツネ、ぴょんぴょん跳びの野ウサギ、オオカミ、小熊、怒りっぽい雌熊、立派な雄熊、道を行く婚礼の行列、教会のそばの葬式の行列、空の月、天の太陽。
 
 食べる前のトラ猫の決まり文句は「ちょっとは食べたわ。でも、なにも食べていないくらいおなかはぺこぺこ」

 最後に何が出てくるか興味津々でいると、ヤギがでてきて、トラ猫を橋から吹き飛ばし、川に落っこちた猫が破裂してしまいます。

 なんともいえない大食いの猫です。

 日本にはこうしたタイプの昔話がないのも特徴でしょうか。


この記事についてブログを書く
« アリになった数学者 | トップ | 巣をつくる あなをほる »
最新の画像もっと見る

絵本(昔話・外国)」カテゴリの最新記事