白い池 黒い池/リタ・ジャハーン=フォルーズ・再話 ヴァリ・ミンツイ・絵 もたい なつう・訳/光村教育図書/2015年
イランを舞台にした再話。
シラーズの母は、シラーズをうむとすぐ亡くなりました。父親が再婚した相手にはシラーズと同い年のナルゲスという娘がいました。父が亡くなると、シラーズは学校にも行けず、家の仕事を全部させられるようになりました。
ある日、シラーズはまもなく訪れる冬にそなえて、母が残してくれた毛糸玉でセーターを編もうとしました。そこへ びゅうっと風が吹いてきて、毛糸玉は風に飛ばされてしまいました。シラーズは、ある家の庭の葉かげに、ちらちらみえる毛糸玉を見つけました。
シラーズがその家を訪ねると、ぼさぼさ髪で、顔は汚れ、しみだらけの服のおばあさんが、条件付きで毛糸玉をかえしてやろうといいました。
おばあさんは、乱雑極まりない台所を壊してほしいと、金づちをおきました。シラーズは、台所を壊わすどころか、食器や鍋を洗い、流しや壁や床をみがき、野菜でスープを作りました。「おわりました」と、シラーズがいうとおばあさんは、なにもいわず、荒れ放題の庭の花を全部すて、花なんか咲かない庭にするようにいいました。ここでも、シラーズは枯れ草を刈り、芝生を手入れし、雑草やいばらをひきぬき、岩の下の水を庭にひきいれることに成功します。
それから、おばあさんのぼさぼさの髪を切り、髪を洗いブラシをかけました。おばあさんは、スープを飲み終えると毛糸玉を返し。門の外の白い水の池、黒い水の池に、三度つかるようにいいました。
夕飯の支度もできていないと、義母の怒鳴り声を覚悟したシラーズですが、池に入ったシラーズは見違えるように美しくなっていたのです。
昔話のパターンで、つぎにナルゲスが、おばあさんの家にいきますが、ナルグスは、台所を壊し、庭を完全に根絶やしにしました。そして、シラーズよりも美しくなれると、三度と言われた白い池、黒い池に、何度もつかって、家に帰りました。・・・
変わり果てた娘を見た義母が、シラーズに問い詰めると、シラーズはこたえます。「おばあさんの心の声に耳をすまし、おばあさんが ほんとうにのぞんでいるとおりにしたんです。おばあさんの、心のたのみのとおりに・・・」
白い池も黒い池もおなじで水で、つかる人の姿をかえたりはしない。だがその水は、人の心のうちを外に出し、光を あてる水でした。
とちゅう、シラーズが おばあさんの頼みどおりしないのは、大人には わかるのですが、子どもにはちょっと難しいかも。
味のある再話ですが、やや文が長すぎでしょうか。