なぞの あねさま/監修・松谷みよ子 脚本・桜井信夫 画・清水耕蔵/童心社/1998年(12場面)
むかし、力じまんの3人兄弟が力だめしに旅にでました。旅のとちゅう、ある立派な長者の家の前に“立札があり、「知恵あり、力ある若者を むこにしたい」とかいてありました。
ここで、三人が長者の前にならぶと、長者は、婿殿ををきめるためには、みかけだけではなく 仕事だめしに まず、千かり田んぼの田おこしをするようにいいました。
まずは、はらごしらえをして、それから三人が千かり田んぼのたおこしをはじめました。そのはやいこと はやいこと ふつは十日もかかるたんぼを 一日でやりあげました。仕事ぶりは三人ともおなじようで、優劣が決められず、三人は長者の家にくらしはじめます。
何日かたっても、娘の姿はみえません。ある夜、三人の部屋の前を、女の人がろうそくをもってとおりすぎました。三人が後をつけてみると、女の人は背中を向けて床板を取り外し、木の箱をとり、蓋を取りました。「ふっふふふ」と笑った女の人は、骸骨をとりだすと、ふりむきもしないで三人の声を掛けます。血のついた骨を目の前につきだし、振り向いた女の顔は、鬼でした。うえのふたりは たまらず 逃げ出しました。下の弟だけはじっと骨をみつめると、ついっと手を伸ばして 骨を ばりばり たべはじめました。
すると、「ああ、よくぞ たべてくださいました。」と女の人が いうなり、白い着物をぬぐと、そこには うつくしいあねさま。あねさまは、「これまで なんにんも むこさまになりたいとやってきましたが、みんな途中で、逃げ出し、骨までたべるような 肝の据わった一人はおりませんでした。」と 話しました。そうして、弟は、めでたく長者のあねさまの婿に。
婿を選ぶのは、女性の側に決定権があります。
途中ぞっとさせておいて、骨は、餅でつくったうまい骨だったというオチ。