どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

ギーギードア

2017年11月12日 | 昔話(外国)

 お泊り保育のおはなし会で聞いた「ギーギードア」

 「語ってあげてよ!子どもたちに」(マーガレット・リード・マクドナルド・著 佐藤涼子・訳 編書房)のなかに、この「ギーギードア」がありましたが、どうも印象がちがっていました。マーガレットさんのは、聞いていたより大分長い感じがしました。

 聞いたのは、たなかやすこさんの「おはなしはたのしい」のなかのようでした。

ドアを ギギギギギ~!
すると、豚はー、ぶぶぶ!
犬はー、わわわん!
猫はー、にゃーん。
トミーは、わー!
おばあちゃんは、急いでもどってくると
「トミー、どうしたんだい?
何か怖いのかい?」
「ううん。ぼくちっともこわくない。」
「そうや、トミー。今度は馬も一緒に寝たらどうやろ。」
「うーん。ぼくそうする。」
そこでおばあちゃんは、馬小屋から馬を連れ出すと 二階へよいしょ!よいしょ!と持って上がり
ベッドに寝かせました。
そして、トミーにチュッ。
猫にチュッ。
犬にチュッ。
豚にチュッ。
馬にチュッ。
「トミー、あかりを消して、ドアを閉めても怖くないかい?」
「うん。ぼくちっともこわくない。」
そこでおばあちゃんは 明りをパチン!

<マーガレット版>

そしてドアを閉めました、 ギイイイイギギギギ~!
すると、ブタが鳴き出しました!
”ブヒ! ブヒ! ブヒ!”
イヌが鳴きだしました!
”バウ! ワウ! ワウ!”
ネコが鳴きだしました!
”ミャウ! ミャウ! ミャウ!”
男の子が叫びました!
”ワー、怖いよー・・・・”
おばあちゃんがはしってもどってきました。
”どうしたんだい! ぼうや、怖いのかい?
”ううん・・・ぼく怖くなんかない”
”こまったねえ・・・ そうだ、ぼうや、ウマもいっしょにねたらどうだろう?”
”うん! ぼくそうする。”
そこでおばあちゃんはウマ小屋からウマを引っ張り出しました。
おばあちゃんはウマを二階に連れてきました。
おばあちゃんはウマを毛布でくるみました。
おばあちゃんはブタを毛布でくるみました。
おばあちゃんはイヌを毛布でくるみました。
おばあちゃんはネコを毛布でくるみました。
おばあちゃんはぼうやを毛布でくるみました。
おばあちゃんはウマを毛布でくるみました。
おばあちゃんはぼうやにおやすみなさいのキスをしました、チュッ。
おばあちゃんはネコにおやすみなさいのキスをしました、チュッ。
おばあちゃんはイヌにおやすみなさいのキスをしました、チュッ。
おばあちゃんはブタにおやすみなさいのキスをしました、チュッ。
おばあちゃんはウマにおやすみなさいのキスをしました、チュッ。

それから、おばあちゃんは言いました。
”あかりを消してドアを閉めても、怖くないかい?”
ちいさな男の子は言いました。
”うん。ぼく怖くなんかない!”
おばあちゃんは 明りを消しました、ペチッ!


 うーん、むずかしい。マーガレット版は長いのですが、場合によっては柔軟に対応できるところもあります。短いとなかなか応用ができません。

 トミーとぼうや、どちらが適当でしょうか。

 「ギーギードア」とおなじ内容が「きしむドア」(英語と日本語で語る フランと浩子おはなしの本第2集/フラン・ストーリングス・編著 藤田浩子と「語れやまんばの会」・訳/ 小林恭子・絵/一声社)というタイトルでありました。

  名まえではなく”男の子”と表現されています。この話には、ベッドがこわれたあと、ベッドを修復する場面があり、これも楽しいのですが、「きしむドア」では、”おばあさんは家をたてなおさなければなりませんでした”と、さっぱりしています。

 もともとはプエルトリコの話との注釈もありました。


なくなったかせ糸・・オーストリア、ホレばあさん・・グリム

2017年11月11日 | 昔話(外国)

・なくなったかせ糸(世界の昔ばなし3 オーストリア いちばん美しい花嫁/飯豊道男・編訳/小峰書店/1983年)

 グリムの「ホレばあさん」と同じ話型ですが、途中にでてくるのが、首が二つある男からはじまって、しまいには首が12もある男がでてきます。

 ままむすめが、井戸に落とした糸巻きをさがしにいってあったのが「ホレばあさん」。ここで仕事をきちんとして、帰りには糸巻きもかえしてもらい、体中がすっかり金でおおわれるのがグリム版ですが、ホレばあさんのところにいくまで、パン焼きがまで悲鳴をあげているパンを取り出してあげ、りんごがいっぱいなっている木をゆすって、りんごを落としてあげるところがあります。

 オーストリア版ではパンとりんごが、首がいくつもある男との出会いにかわっています。

 どちらもままむすめが家にかえりついたときには、金ずくめになりますが、どんなイメージでしょうか。

 「なくなったかせ糸」で首がいくつもある男にあうというのは、とくに意味はなさそうです。

 ままむすめが、おばあさんから夕食はどんな物がいいかねと聞かれ
 「豚のえさでも少々いただけましたら」
 次に寝るのはどこにしょうと聞かれ
 「豚の寝るところでけっこうです」とつつましく答えます。

 結果的には、ままむすめはミルクとパン、羽ぶとんに寝ることになります。

 ままむすめがでてくるとじつのむすめもでてきますが、どうなるか容易に想像できるのが昔話です。

 むすめたちをむかえ、なきごえをあげるのがグリム版では、おんどりですが、オーストリア版では子犬です。

 

・ホレばあさん(子どもに語るグリムの昔話/佐々梨代子・野村ひろし・訳/こぐま社/1990年)

 冒頭に後家という表現がでてきます。
 大人の方だったらどうということはないのですが、子どもにとってはどうでしょうか。

 こぐま社版をテキストとされている方も多いのではないかと思いますが、ストーリーの展開では、実の娘とまま娘ということだけでも十分です。語る方はこのままの表現で話されているか知りたいと思いました。

 「なくなったかせ糸」では「おかみさんに娘がふたりいて、ひとりはじつの娘で、もうひとりはまま子だった。」とはじまります。岩波少年文庫のグリム童話集 上/佐々木田鶴子・訳では、後家は「夫をなくした女のひと」、「まま娘」について特にふれられていません。

 「むかし、あるところに母親とふたりのむすめがいました」とはじまるのは(語るためのグリム童話2/小澤俊夫・監訳 小澤昔ばなし研究所・再話/小峰書店/2007年初版)。むすめのひとりは実のむすめ、もうひとりはままむすめとあります。

 出だしの部分ですから、あまり気にしなくてもいいのかもしれませんが・・・。


はははのはなし

2017年11月10日 | 絵本(日本)


   はははのはなし/加古里子:文・絵/福音館書店/1970年かがくのとも 1972年かがくのとも傑作集


 こどもが歯磨きを嫌がったら、この絵本がピッタリです。

 説明がうまくいかなかったら、助け舟になること請け合いです。それも無理無理ではなく自然に受け入れられそうです。

 歯の働き、虫歯がなぜできるか、健康への影響、そして歯の数まで。

 虫歯になって、大きく開けた口の中の歯が欠けた状態はやっぱりショックです。

 転ばぬ先の杖、後悔先に立たずです。

 今、歯医者にかかっているのですが、ポスターには、認知症と歯周病には密接な関係があるということ。長い先をみても、歯が健康であることが必要です。


 最後ページ、「ははは・・・」が子どもは20回、大人は32回続きます。


屋上のとんがり帽子

2017年11月08日 | 絵本(日本)


    屋上のとんがり帽子/写真:折原 恵・写真と文/福音館書店/2008年

 たくさんのふしぎ傑作集の写真絵本です。

 ニューヨークはテレビなどでよく見慣れているはずなのに、屋上に木製の給水タンクがあるとは思えませんでした。

 屋上の給水タンクがとんがり帽子のようにみえるありさまが不思議でした。

 夏は暑く、冬は零下20度にもなるニューヨークでは、熱をとおしにくい木を使うと夏に水を冷たく、冬に水をこおらせずにあたたかくたもつにいいといいます。
 コンクリートはひびわれし、鉄はさび、プラスチックも年月がたつともろくこわれやすく、木製のほうが長持ちし、安上がりになるといいます。

タンクができるまでは、結構原始的で、木材を屋上で組み立てています。

 ニューヨークという近代的なイメージと、木製タンクという組み合わせが面白いと思いました。

 高いところから俯瞰する写真には、たくさんのとんがり帽子がみえます。

 この絵本をみたあとで、日本の高層ビルの上を注意してみてみると、給水タンクは、球状や円柱で鉄かプラスチック、またはコンクリートが多いようです。

 日本に、木製の給水タンクをつかっているところがあるのでしょうか。


かえるだんなのけっこんしき・・アメリカ

2017年11月07日 | 絵本(昔話・外国)


    かえるだんなのけっこんしき/ジョン・ラングスタッフ・再話 フョードル・ロジャンコフスキー・絵 さくま ゆみこ・訳/光村教育図書/2001年


 アメリカで、子どもに歌ってきかせたというおはなし歌とあります。

 もとはスコットランドで400年も昔に書かれたもの。

 かえるだんなが、ねずみに結婚を申し込んで、すぐに結婚式の場所、おいわいのごちそう、花嫁の衣装も決まって・・・。

 しろいが、こがねむし、あらいぐま、まだらのへび、まるはなばち、ちいさなのみ、がん、2匹のありんこ、はえ、ひよこがつぎつぎにやってきて・・・。

 最後はぎょろめのおすねこ。みんなを追い払ってしまいます。

 なぜか花婿と花嫁はフランスにむかう船のなかです。

 やはり、歌がないとピンときません。最後に楽譜ものっているのですが、残念ながら読めません。

 とにかくおはなし歌というのもあることに新しい発見でした。


森の小さなアーティスト

2017年11月06日 | 絵本(自然)


    森の小さなアーティスト/今森 光彦:文・写真/福音館書店/1990年

 びっくりすることが連続する写真集です。

 不思議な蝶。

 バッタ、コノハムシ、コウモリガの擬態から、たくさん集まって擬態するカメムシの幼虫。

 大切な卵に糞を塗り付けるクロボシツハムシ。

 死んだふりのシロヒゲナガゾウムシ、ナガゴマフカミキ。

 かと思えば、敵が近づいたことをしると大きな目玉でギョロとにらむユカタンビワハゴロモ、ヤママユガ。

 臭いにおいや苦い汁を出して、敵(小鳥、トカゲ)をいやがらせるマルムネカレハカマキリ。

 ほとんどが知らない昆虫が多いのですが、生存競争に負けずとたくましい知恵で立ち向かいます。

 作者がいうように、たしかに虫たちは個性的なアーティストのようです。


ふくろうのそめものや

2017年11月05日 | 絵本(昔話・日本)


    ふくろうのそめものや/山口 マオ・作絵/鈴木出版/2001年


 からすは、むかし真っ白でしたが・・・。

 森中の鳥たちが、ふくろうの染物屋にやってきて、好きな色に染めてもらっていたのをみたからすが、まけちゃならんと、ふくろうの染物屋に、すっとんで行きます。

 だれよりもきれいになりたいからすでしたが、ももいろ、あお、きいろ、あかといっているうちに、ふくろうがはらをたてて・・・・・。

 ふくろうの染物屋が閉店してしまって。


 松谷 みよ子さん作、和歌山 静子さんの絵で童心社からも出版されています。

 鶴の白、クジャクの色彩などどうしてこんな色なるか不思議なことだらけ。科学的には説明できるのでしょうが、ふと疑問をもつと世界が広がるかも。


    ふくろうのそめや/奥山 多恵子:文・絵/福音館書店/2008年

 きじ、おおるり、しじゅうから、みそさざい、いぬわし、かわせみなど鳥の色の特徴がよくでています。

 モノトーンのあとにカラーページが続いている構成に目をひかれました。

 ふくろうが夜行性の理由もありますが、どこの昔話でしょうか。

 そめものやといっても、筆をつかっているので、絵描きやさんかな。

 ふくろうさん、染料はどこから調達したのかおしえて!


扇子女房

2017年11月03日 | 昔話(日本)

     語りつぎたい日本の昔話 浦島太郎/小澤むかしばなし大学再話研究会・再話 小澤俊夫・監修/小峰書店/2011年


 昔話から教えられることもさまざま。

 八面鬼人というまもの?がでてくる話。八面といいますから顔が8つあるのでしょうか。

 はじめて旅に出た父親が息子にかってきた土産が、扇子。父親は開かないで使いなさいという。
 暑い夏だったから息子が扇子を開くと、そこには美しいむすめの絵が。

 そのむすめにどうしても会いたいと、息子がむかったのが扇子屋。

 そのむすめというのは、殿さまのひとりむすめで、三つのとき八面鬼人にさらわれて行方不明といいます。

 鬼人が留守のとき、むすめにあった息子が、屋根裏部屋にかくれていると、鬼人はむすめを酒の肴にして食べて寝てしまいます。

 寝ているすきに息子は鬼人を倒し、国に帰る途中、橋の下で鳴いている赤ん坊を見つけ、一軒の家にしばらく預かってもらうことにし、家にかえります。

 すると父親はすぐに、赤ん坊をつれてくるようにいいます。
 あずけた家にいってみると赤ん坊は、もう17,8の美しい年ごろのむすめになっていて・・・。

 食べられたはずのむすめは、じつは信仰していた神さまが身代わりになっていたのです。

 扇子を買ってきながら、開かないでという父親は、なぜ扇子をお土産にしたかは不明ですが、とにかくめでたくむすめと結ばれるというのは、昔話らしい終わり方です。


妖精の騎士タム・リン・・スコットランド

2017年11月01日 | 絵本(昔話・外国)


     妖精の騎士 タム・リン/スーザン・クーパー・再話 ウォリック・ハットン・絵 もりおかみち・訳/小学館/2005年



 スコットランドの王女マーガレットは、毎日朝から晩まで、お城の塔のてっぺんの部屋で、刺繍をしたりしていて、どこかの王子が結婚を申し込みにくるのを待つ日々。

 しかし、マーガレットは、こんな生活がきらいで、お城の外に行って、思いきり走ったり大きな声で笑ったり、わくわくするような冒険がしてみたかったのです。

 ある日マーガレットは、お城をとびだして、カータヘイジの森に、バラの花を摘みにでかけます。

 カーターヘイズの森には、妖精の騎士タム・リンがあらわれて、入った者に呪いをかけ二度とでられないようにしてしまうと、だれもが知っていました。

 そこであったのは、金色の巻き毛が風にゆれ、日に焼けた肌も金色にかがやく美しい若者。
 日が暮れて、城に帰ってみると、一週間もたっていました。

 もう一度カータヘイジの森にでかけたマーガレットは、若者の正体を知ることになります。

 若者は妖精の騎士タム・リンで、三歳のとき妖精の女王にさらわれ、地獄の悪魔に引き渡されることになっていました。

 妖精の国から逃げ出すには、愛してくれる娘があることをしてくれたら、逃げ出せるというのです。
 あることとは、夏至まつりの夜、妖精族の騎馬行進で、炎の息をはく白い馬が通ったら、その馬の騎士の
手袋をはめていない手をしっかりつかみ、最後に手につかんでいるものを”聖なる井戸”に投げ込むというものでした。

 夏至まつりに”聖なる井戸”のそばでまつマーガレットの前に妖精の騎馬行進がやってきます。
 
 炎の息をはく白い馬の騎士の手をつかむと、オオカミが襲い掛かり、オオカミが消えると今度は大ヘビ、さらに雄鹿、最後には燃える鉄。
 熱さにたえ、燃えさかる鉄を力いっぱい”聖なる井戸”に投げ込むと・・・。

王女マーガレットとタム・リンが、そこらへんに普通にいる女の子と若者に描かれているのは、意識してそうしたのでしょうか。やや物足りません。

 文はかなり長くなっています。

 妖精の行進の模様はあまり描かれていませんが、銀色の鳥、夢のようにきらびやかな貴婦人、影のように空をすすむ行進です。