夕べ、友より、電話。
ワラビ、もらったから、取りに来ない?
毎年届く、中国山脈のワラビ、
他に、フキ、
はじめての、コシアブラ。
味つけをして、早速頂きましょう☺️
夕べ、友より、電話。
ワラビ、もらったから、取りに来ない?
毎年届く、中国山脈のワラビ、
他に、フキ、
はじめての、コシアブラ。
味つけをして、早速頂きましょう☺️
第3回に続き、産業医の話はもう少し引っ張りますね。
産業医と臨床医と両方やっている方が共通して言うのは、産業医をやると臨床が変わってくるということ。多分少し上達してるんじゃないかと思うのですが。例えば土曜午前の外来初診に、血圧160/96mmHgの50代高血圧男性が来ますよね、実は働き方がこの人の高血圧を助長している可能性は大きいのです。
「おや今回はどうされましたか?」
「いや去年まではそんなことなかったのですが、会社の健康診断でひっかかりまして、受診するように言われたのです」
「ほう。どなたに?保健師ですか(ということは、わりとしっかり社員の健康管理をやっている会社だな。職域へのアプローチが必要であれば、そっちから手を回す手段もあるな)。今どのようなお仕事をされているのですか」
「主に営業です。実は去年課長になりまして、大きな案件を任されまして」(ということは受診に通うのも大変である可能性があるな)
「プレッシャーですね。結構、それは先が見えない仕事?」
「そうですね。あと3カ月くらいすると一段落するとは思うのですが、これからも同じようなことは続くかもしれません」
「何時ごろ出て、何時ごろ帰ってこられるのですか(睡眠時間の不足も高血圧の増悪因子になっている可能性があるな)」
「朝6時には起きて、会社に着くのが9時ですかね。最近はなんやかんやで、帰りは23時にはなっています」
「座れます?」
「行きは始発があるので座ってくるようにしていますが、帰りは無理ですね」
「あ、行き座れるのは少し安心しました。でも大変ですね。ご家族、なんか言っておられます?最近、疲れてるねぇとか」
「妻は心配してくれてます。課長になって体壊さないでね、とか。子供4歳なんですが、あまり会えませんね」(専業主婦とそうでないのでは結構家族のレジリエンスも違ってくるな)
で、この人にはストレスが結構かかっているなと判断する。ということは睡眠のこととかもそのうち聞く必要があるな。今日は喫煙歴、家族歴は聞かなくちゃな。規則正しい食生活や運動はさすがにできてないだろうし、その重要性を説明しても難しいだろうな。家庭血圧の導入は難しそうだ。家族関係は悪くなさそうだな。奥さんの弁当なのかな、そしたら減塩の重要性を奥さんに説明する必要はあるかも。家のローンはどうなのかな。保健師から高血圧のリスクについては説明してありそうだから、それを本人がどのくらい理解しているかを確認してみるか。まずは会社が受診しろというのであるから、何らかの薬を出しておいた方が本人は納得しやすいかも。健診結果の過去5年分は、頼めば持ってきてくれそう。3カ月経ったら、落ち着くと言っているから、そこでもう少し強く介入する手もあるか。次回の予約に来られないことはあるだろうけど、ドロップアウトしないための方策はどうするかな。差し当たっては二次性高血圧の除外をしておこうか――。みたいなことが自動的に頭に流れるようになります。
これがいわゆる不定愁訴の場合、ほとんどが会社のことが原因ですから、その辺を解きほぐした上で色々アプローチを打っていくことになります。
ところで臨床医は患者を診察しますが、産業医は従業員に面談をします。これは体調がどうか、十分に働けているかを確認するためのもので、特に休業中の従業員に対しては定期的に行うことが多いです。医療行為ではないので診断や治療はできません。先日、産業医面談で大失敗をしましたので共有させてください(本人の許可は取ってあります)。
その会社は前の産業医から引き継いだ会社です。何人か休職中の方がいたのですが、その中に20代後半で、入社後半年程度でうつ状態の方がいました。仕事はデスクワークで人間関係にも大きな問題はなさそうです。前医から続く月に一度の面談に臨みました。
「はじめまして、神田橋と申します。過去の面談記録を見させてもらったんだけど最近どうなの?」 「相変わらずですね。朝はつらいです。今もこうやって、月1回の面談に会社に来るのもしんどいです。早く復帰できる体になりたいです」
「以前の記録見るとさ、夜中にオンラインゲームをやってて、それで前の産業医と喧嘩したんだって?」
「そんな影響があるほどはやってないと思うんですよね。11時くらいには終わりますし、朝は目覚ましで目は覚めるんです」
話してみると、割とこだわりの強いタイプで、自分の思った通りの復職ができないことに強い焦りを覚えておられました。
近医から投薬中で、僕は現在の食欲・睡眠状態、日常生活の確認や、睡眠・覚醒リズムを整えることと、日中は体を動かすことを指導したりしていました。とにかく朝起きるのがつらいと訴えます。昼になると体が動くのだが、それでも面談のために会社まで歩いてくるのも体が疲れるとおっしゃいます。また「会社に迷惑をかけているので、早く良くなって働けるようになりたいけどできない」という強い焦りを毎回強く訴える方でした。
10回程度面談したところで、なんというか壁を押しているような状態になり、面談は硬直します。本人も良くなる傾向はありません。その会社の福利厚生はしっかりしており、まだしばらく休業はできます。そこで案の一つとして主治医の変更を申し出てみました。彼も同意したので、信頼している医師に紹介状を書いて、そちらを受診してもらうことにしました。
そこで分かったのは、彼には実は今まで見逃されていた先天性心疾患があり、それが進行していたということでした。歩くと息切れがする、元気が出ないというのが心不全の症状で、それで働けないことが二次的にうつ状態を引き起こしていたのです。心疾患の進行は手遅れになる直前だったのですが、心臓外科に紹介され投薬、手術を受け、今は元気に働いています。休職中であったため、定期健康診断も受けておらず進行に気づいていなかったのです。
僕も引き継ぎのケースということもあり、うつ症状の方ばかりに目が行っていて、体のチェックを怠っていた。確かに入社時健診の心電図とX線を取り寄せてみてみると、わずかに異常があるのです。痛恨のケースです。これ以降、メンタルの問題がある方にも、身体的な原因でないかは必ずチェックしていますし、休職中の方にも健康診断は受けるよう会社の体制を変えることにしました。彼は僕に感謝してくれているのですが、かえって申し訳ない気分にもなります。
そろそろページが尽きました。次は山岳医の話をしましょうか。
1967年生まれ、1992年東京大学理学部数学科卒、1999年東大医学部医学科卒。東大病院内科で研修の後、東大第一内科入局、血液・腫瘍内科入局。都内病院で研修後、2008~2011年東大病院無菌治療部助教。2011年からとしま昭和病院勤務、2015年合同会社DB-SeeD設立。