仲間と回復の道切り開く 孤立から解放、全国に施設
2月27日に80歳で死去した「ダルク」創設者の近藤恒夫(こんどう・つねお)さんは、自身も覚醒剤依存に苦しんだ当事者として、35年以上、薬物依存からの回復を目指す「仲間」たちの支援に力を尽くしてきた。
「私の意志の力ではどうにもなりません」。1980年、覚醒剤取締法違反罪で有罪判決を受けた公判の最終陳述で、近藤さんは涙を流しながら裁判長に訴えた。どんなにやめようと努力してもやめられない。その苦しみを正直に打ち明け、自身が薬物依存に対して「無力」であることを認めることから、近藤さんの回復は始まった。
その後、アルコール依存者の支援活動を行っていた神父らの協力を得て、85年にダルクを設立。生前「私たちは『犯罪者』としてではなく、同じ病気を抱える仲間として向き合ってきた」と語ったように、互いの経験や悩みを分かち合い「仲間たちの中で薬物をやめていく」当事者活動をけん引。医療や福祉では実現できないダルク独自の回復への道を切り開いた。
元入寮者が回復してスタッフになり、別の場所で新たなダルクをつくり...。そうやってダルクは現在全国の約60団体、約80施設に広がった。近藤さんは著書でこうつづる。「薬物依存は、その人が抱える孤独や孤立から解放してやらない限り、絶対に解決しない」