元厚労相そして里親になる…制度推進に関わった責任者「経験通し問題点把握したい」
官房長官や厚生労働相を歴任した元衆院議員の塩崎恭久さん(71)が、地元の愛媛県で里親として登録された。厚労相時代に里親制度を推進する法改正に取り組み、「制度に関わった責任者として、普及に貢献したい」と申請した。
塩崎さんは1993年の衆院選で旧愛媛1区から出馬し、初当選。28年間の国会議員生活で、最も力を入れたテーマの一つが「児童養護問題」だった。
虐待などの理由で親元で暮らせない子どもについて、日本では施設での養育が主流だった。現場を視察する中、家庭的な里親の元で養育する必要性を感じ、厚労相だった2016年の児童福祉法改正では、「家庭養育優先」の理念にこだわり、条文に盛り込まれた。里親への手当を拡充し、受け入れやすい環境も整えた。
しかし、その後も里親への委託は伸び悩んだ。親元で暮らせない子どものうち里親に委託された割合(委託率)は16年度末の18・3%から19年度末に21・5%に増えたものの、7割を超える米英などと比べると低水準だ。里親制度への理解不足が背景にあるという。
こうした現状を問題に感じていた塩崎さんは、国会議員生活を終えるにあたり、「自分に何ができるのか」と考えた。松山市の児童相談所を訪ね、里親に年齢制限がないと聞き、妻の千枝子さん(70)に「里親になろうと思う」と相談。「あなたの気持ちはわかる」と快く受け入れてくれたという。
今月中旬、愛媛県から里親に登録されたとの通知が届いた。塩崎さんは「心に傷を負って不安を抱える子どもは多く、責任を持って預かり、『この家にいたら大丈夫』と安心して暮らせる場所にしたい」と決意を語る。制度の問題点を把握したいという目的もあり、「実際に経験することで、使い勝手の悪いところに気づけば、修正を国に働きかけていきたい」と話した。