息子自殺「パワハラ原因」 遺族訴え、道立の看護学院
北海道立江差高等看護学院(江差町)の学生らが複数の教員から暴言や暴力などのパワーハラスメントを受けた問題で、2019年に自殺した男子学生=当時(22)=の母親(45)が15日までに共同通信の取材に応じた。学生は生前パワハラに悩んでいた様子で、自己否定のメモ書きが残されていたとし「学院に殺されたと思う」と母親は訴えた。
道が設置した第三者調査委員会は他の学生へのパワハラ行為は認定。道はこの学生の「自殺は把握している」との立場だが、パワハラがあったかや、自殺との因果関係の調査を行わず、謝罪もしていない。道の医務薬務課と看護学院はいずれも「現時点ではお答えできない」としている。
母親によると、学生は16年に看護学院に入学。程なくして「教員が逃げてリポートを受け取ってもらえない」「良い教員が来ても他の教員にいじめられ辞めていく」などと打ち明けた。母親が「学院に言おうか」と尋ねると「余計ひどくなるから」と拒んだという。
学生は2年生だった17年10月、何度も書き直しを指示されたリポートを期限直前に提出しようとしたが、期限を過ぎているとして受け取りを拒否され留年が決まった。
それでも取れる単位は取得しようと他の科目で再試験を希望したが、教員は「留年するから(受けなくて)いいでしょ」と認めなかった。留年を受け、裕福でない家庭に迷惑をかけることになったと母親に謝り続けた。
3年生に進級した後の19年9月、実習に来ないことを心配した教員が学生のアパートで自殺しているのを発見した。学生のメモ帳には教員から感情表現を「傲慢(ごうまん)なアピール」と言われたことや、「自己の悪い所をリストアップする」などの記述が残されていた。
第三者委は昨年10月の報告書で、複数の学生について提出期限内にリポートを受け取らず不合格とする行為や、再試験を希望する学生に再履修を勧める行為をハラスメントと認めた。
母親は「生きていたら看護師になり人の命を救っていたかもしれない。教員はパワハラを認め反省して」と話した。
※道立看護学院パワハラ問題
北海道立江差高等看護学院の学生や元学生が2020年9月以降、教員から暴力や暴言などのパワーハラスメントを受けたと訴えた問題。道は昨年5月に第三者調査委員会を設置。昨年10月の調査報告書などで同様の訴えが寄せられた紋別高等看護学院も含め、教員によるハラスメントを計53件確認した。被害を受けた学生は計15人、加害教員は計11人に上った。道は昨年10月に説明会を開き、保護者や学生らに謝罪。教員の異動や学生への救済を進めている。