アニサキスでがん治療? 表面に機能性の膜、阪大
サバなどに寄生し、激しい食中毒を引き起こす線虫「アニサキス」を、がん細胞を殺す機能を持たせたゲル状の薄膜で覆うことに大阪大の境慎司(さかい・しんじ)教授(化学工学)らのチームが5日までに成功した。アニサキスにはがんに引き寄せられて動く性質があるといい、境教授は「将来、がんの治療に応用できるかもしれない」と期待を寄せる。
チームによると、アニサキスは体長数センチ。西洋わさび由来の酵素をアニサキスに塗りつけた後、特殊な水溶液に浸して化学反応を起こすことで厚さ約0・01ミリの薄膜で表面を覆った。薄膜は柔らかく、アニサキスの動きを邪魔しないという。
水溶液に混ぜる化合物の種類を変えることで薄膜に狙った機能を持たせられる。がん細胞にダメージを与える過酸化水素を体内で発生させるように調整したアニサキスを、がん細胞を含む培養液に入れると、がん細胞が24時間で死滅した。
不要になったアニサキスをどうやって体内から除去するかが今後の課題の一つという。