妊婦の血液から胎児の染色体異常を調べる「新出生前診断」の体制づくりを進める日本医学会の運営委員会は12日、検査を実施する「連携施設」に全国204カ所のクリニックなどを認定したと発表した。6月に発表した中核的な「基幹施設」と合わせ、計373カ所で検査や相談ができることになる。認定された施設数は以前の体制の3倍以上に増え、希望する妊婦の利便性が向上する。
連携施設の運用は26日から始める予定。施設名は近くホームページで公表する。12日にオンラインで記者会見した岡明(おか・あきら)委員長は「連携施設ができることで検査を受けるだけでなく、遺伝カウンセリングなどいろいろな情報を得る窓口が増える」と述べた。
新出生前診断は妊婦の血液にわずかに含まれる胎児のDNAの断片を分析し、ダウン症など3種類の染色体異常があるかどうかを調べる検査。陽性判定後、さらに羊水検査を受け異常が確定した場合、多くが中絶していることから命の選別につながるとの批判もある。遺伝カウンセリング体制が重要で、日本医学会は以前、108の施設で実施を認定していた。
だが出産の高齢化で需要が増える中、美容外科など専門外の無認定施設が急増。検査の意味や結果について十分な説明のないまま多くの妊婦が混乱する事態が発生した。そのため運営委員会は認定の体制の拡充を検討し、2月、基幹施設と、その下で協力する連携施設を新設するとの指針を公表した。6月にまず基幹施設169カ所を認定、これまで認定された施設がなかった7県にも拡大した。
連携施設はカウンセリングや検査自体を実施する。陽性と判定された場合の確定のための羊水検査などは基幹施設に委ねることができる。
※新出生前診断の連携施設
日本医学会の運営委員会が2月にまとめた新出生前診断の指針で新設された認定の枠組みの一つ。より要件の厳しい基幹施設と協力して検査を実施できる。検査について十分な知識を持つ産婦人科医の常勤が要件。臨床遺伝専門医の資格を持つか専門の研修を受けた医師が検査の前後に遺伝カウンセリングを行う。カウンセリングや陽性判明後の確定検査は基幹施設でも行える。以前の体制では認定された施設数が少なく、地方ではアクセスが悪いことなどから無認定施設へ多くの妊婦が流入する問題が起きていた。