老化による自己免疫病のメカニズム解明 慢性腎不全や関節リウマチの治療に期待
地域 2022年9月21日 (水)配信京都新聞
老化に伴い増殖したリンパ球「T細胞」の一種が自己免疫病や慢性炎症疾患を引き起こすメカニズムを解明し、細胞の増殖を人為的に抑制することに成功した、と京都大のグループが発表した。老化関連疾患の新たな治療法開発につながる可能性があるという。国際学術誌セル・リポーツに20日掲載された。
ヒトは加齢に伴って免疫機能が変化し、慢性腎不全や関節リウマチなどの老化関連疾患を発症しやすくなるが、そのメカニズムの全容は不明だ。免疫反応の司令塔と呼ばれるT細胞は通常、外部からの病原体を認識して防御反応を示すが、マウスを使った実験で病原体にほとんど反応しない特異な「老化関連T細胞(SA―T細胞)」が加齢によって増えることが分かっている。
京大医学研究科の服部雅一教授や福島祐二助教らのグループは、SA―T細胞と「自己反応性B細胞」という細胞に現れる特定の分子同士が刺激し合うことで各細胞が増殖し、病気を引き起こしていることを突き止めた。分子同士の相互作用を阻害する抗体を1カ月投与したところ、両細胞が3分の1程度まで抑制されることが判明。重い自己免疫病「全身性エリテマトーデス」を発症するモデルマウスでは、発症予防に加えて高い治療効果も確認されたという。
服部教授らは「高齢化社会の中で老化関連疾患の有病率の高まりは大きな課題。今回の研究成果がこうした疾患克服に向けての新たなアプローチにつながれば」としている。