訪日観光、受け入れ拡大 上限5万人も効果限定的 コロナ共存、感染対策懸念
政府は7日、新型コロナウイルスの水際対策を緩和した。日本人帰国者を含む入国者数上限を1日当たり5万人に拡大し、添乗員なしの訪日観光パッケージツアーも解禁。受け入れ対象を102の国・地域とした制限も撤廃した。ただ個人旅行は認めないなど制約は残り、経済効果は限定的になりそうだ。政府はコロナとの共存を目指し、さらなる緩和を検討するが、感染対策との両立に懸念も残る。
入国者数の上限引き上げは、1日当たり1万人を2万人にした6月1日以来。一連の緩和策では、入国時に必要だった現地出国前72時間以内の陰性証明もワクチン3回目接種証明で不要とした。
添乗員なしのツアーは、旅行業者が往復航空券と宿泊先を手配する。業者が旅程を把握し、感染対策を徹底するためで、訪日客が個別に手配する個人旅行は解禁しない。
観光業界を中心に個人旅行の解禁待望論が広がるが、国土交通省幹部は「感染状況は刻々と変化するので個人旅行解禁の基準を明示するのは難しい」と話す。
制約の一つである査証(ビザ)取得の義務づけも継続する。ビザ発給時にはワクチン接種歴などを確認しており、外務省は現時点では免除に否定的。入国時の検疫を確実に行うため、入国者数の制限も続ける。
コロナ禍前に最も多かったのは中国人客だったが、中国当局が自国民の出国に慎重なこともあり「インバウンド(訪日客)消費の劇的な回復にはつながらない」と分析する百貨店関係者もいる。
政府内では早期の追加緩和論もくすぶるが、松野博一官房長官は7日の記者会見で「内外の感染状況やニーズ、主要国の水際措置の状況を踏まえながら、適切に判断する」と述べるにとどめた。