入院延期、医師ら苦悩...「医療崩壊の状態」 長崎みなとメディカルセンター
2022年9月15日 (木)配信長崎新聞
長崎みなとメディカルセンター(長崎市新地町)の門田淳一院長や同院を運営する長崎市立病院機構の片峰茂理事長らが取材に応じ、新型コロナウイルス感染者の爆発的増加でコロナ病床だけでなく一般病床も逼迫(ひっぱく)。消化器外科などでがん患者らの入院を延期するケースが7月以降に69件起き、「医療崩壊の状態にある」と窮状を説明した。必要な医療行為が十分にできず、現場の医師らは苦悩しているという。
同院は長崎医療圏の基幹病院で43のコロナ病床がある。13日取材に応じ、谷口堅院長補佐(外科系統括)、早川航一救命救急センター長も同席した。
県内の感染者は8月のお盆明けをピークに減少傾向。12日午後7時時点の県全体の病床使用率は45・1%、長崎医療圏は53%。ただ同院は流行第7波が起きた7月以降、満床に近い状態が続いている。
コロナに割いた43床が減るだけではなく、コロナ感染者の看護や介護には通常より多い人員が必要。さらに一般病床で院内感染が起きると、その病棟の転院や新規入院を一時的に停止せざるを得ない。感染力が強いオミクロン株の派生型BA・5が猛威を振るう中、同院では断続的にこうした状況が続いているという。
さらに医療従事者が感染、または濃厚接触者になって30人程度が従事できない状態も続く。門田院長は「世間はウィズコロナだが、スタッフはこの2年半、ゼロコロナを目指し、プライベートも犠牲にして抑制的な生活をしている。それでも感染してしまうケースはある」と話す。
◎救う使命果たせず... 救急医療も逼迫「現状知って」
長崎みなとメディカルセンター(長崎市新地町)の病床逼迫(ひっぱく)で大きな影響を受けているのが、診断が確定し、入院や手術が決まっていた患者たちだ。谷口堅院長補佐(外科系統括)によると、7月以降、消化器外科、呼吸器外科、乳腺外科で入院延期をお願いした事例は69件に上り、9月13日時点で32件はまだ入院に至っていない。2回以上の延期要請は9件あり、69件の約3割はがん患者という。
主治医が患者や家族に説明をする際、電話越しで泣いている人や厳しく問い詰める人もいるという。門田淳一院長は患者の心情を理解した上で、「受け入れたくてもできない状況を分かってもらうのは難しい。患者を救う使命を果たせない状況に医師も苦悩し、疲弊し、泣いている人もいる」と明かす。
同院を運営する長崎市立病院機構の片峰茂理事長は「ほかの病院も同じように厳しく、紹介したとしてもすぐに受け入れてもらうのは難しい。病状をフォローしながら緊急性の高い人から少しずつでも入院してもらっている。感染が落ち着き、もっと受け入れが可能になればペースを上げられる」と語った。
救急医療も逼迫している。コロナの影響で全国的に搬送困難事例が増えている。長崎医療圏の「最後のとりで」と位置付けられる同院には複数の病院に断られた患者が搬送される。早川航一救命救急センター長は「以前は入院できていた方に自宅療養をお願いする事例も多く、心苦しい」と話す。
さらに「ウィズコロナで経済を回すのは分かるし、自分たちは歯を食いしばる。ただ、今の状況は、以前は当たり前だった医療が受けられない事態になっていることは知ってほしい」と訴えた。