TSKが26日と27日に取材してまとめた各自治体の1回目接種を終えた高齢者の接種率。鳥取県内は多くの自治体が20%から50%未満で、江府町では73%となっています。
一方島根県では、大田市の14%など6市町が20%未満。江津市では35%となっています。このうち隠岐知夫村は両県で最も高い84%です。村民全体で見てもすでに7割が接種したことになります。その一方で接種しても依然危機感が続いています。離島ならではの問題を取材しました。
隠岐諸島の最南端に位置する知夫村。人が住む知夫里島と4つの無人島からなります。先月下旬からワクチンの集団接種が始まりました。取材した今月17日には受けている人全員が2回目の接種です。さらに高齢者だけではなく、本来対象ではない若い人の姿も見られますがなぜでしょうか?
接種者(60代)
「他の自治体で進んでないようだが、すんなり終わってよかった」
接種者(40代)
「なるべく早めに打ってもらえるのはありがたいし、迅速に対応してもらって村民としては嬉しい」
基本的に65歳以上の高齢者がワクチン接種の対象です。しかし知夫村ではなぜ若い人たちも接種できるのでしょうか。平木村長に話を聞きました。
平木 伴佳村長:
「(ワクチンは)各自治体に1箱だって言われて高齢者だけだとかなりの数余ると考えていたが、国から離島とかの自治体はそれにこだわらなくて良いというコメントが出たので、これならできると」
知夫村には今年4月、高齢者向けワクチン約500人分が配分されました。村の人口は627人、このうち65歳以上の高齢者は300人程で、約200人分のワクチンが余ってしまいます。こうした中、厚労省は高齢者が500人未満または人口が1000人未満の自治体については、ワクチンを有効活用できるよう64歳以下への接種も認める方針を示しました。これを受け知夫村は、本来対象にならない16歳から64歳までの約270人に対しても接種を始めたのです。先月と今月の集団接種により、既に村民全体の7割以上が2回の接種を完了しています。
この接種状況にウイルス学の専門家・鳥取大学の景山教授は・・・。
鳥取大学医学部・景山 誠二教授:
「集団免疫が出来ている状況と言えると思う。村では感染者を出しにくい状況になったのは間違いない」
集団免疫とは、人口の一定以上の割合が免疫を持ち、感染者が出ても感染が流行しなくなる状態のことをいいます。WHOは今年1月、集団免疫の状態になるには人口の7割以上の接種が必要という見方を示しています。
鳥取大学医学部・景山 誠二教授:
「全ての方が免疫を持ってなければウイルスが入りやすいわけですけど、(人口100人だった場合)その70人がかからない、感染してもウイルスを増やさないと考えていいので、あとの30人は100人が持たなかった時代と比べると確率的にうつりにくい」
実はこれまで1人も感染者が出ていない知夫村。村民全体の7割を超えるワクチン接種の完了によって集団免疫ができつつあるとも考えられますが、決して安心できる状況ではないといいます。
知夫村診療所・竹下 光英所長:
「感染者がわずかな数だったとしても通常の診療に大きな影響になると危惧する。
医療崩壊に直面してしまうことになるので危機感がある」
こう話すのは知夫村診療所の竹下所長です。
知夫村診療所・竹下 光英所長:
「医師1人と看護師4名。診療所1つで普段の診療から行っているので」
村にある診療所は1つだけです。さらに入院設備がないため、感染者が出た場合は船やヘリコプターを使って村の外に移送しなければなりません。また万が一医療スタッフが感染した場合は、診療所の一時的な閉鎖が考えられます。その場合、村の外の病院から代わりのスタッフが派遣される予定ですが、どこに臨時の施設を設けるかなど詳しい内容については調整中と道半ばです。
診療所の看護師:
「これがガウンで、装着した状態で対応する」
知夫村では、コロナの疑いがある発熱患者に対応するため、発熱外来の建物を診療所とは別に用意するなど感染防止対策に取り組んでいます。
竹下所長:
「いろいろなできる連携をしながら支えていくというところで、前向きに対策をとっていくことが重要と考えている」
若い人も含めほぼ接種を終えた知夫村。感染防止の第一弾は大きく前進しています。まだ一人も感染者は出ていませんが、かねてから離島が抱える脆弱な医療体制との難しい向き合いは依然続きます。