規格変更に家族ら戸惑い 「同じ食事与えたいのに」 医療的ケア児の胃ろう
2022年4月25日 (月)配信共同通信社
人工呼吸器などを付けた医療的ケア児らが腹部の穴からチューブで胃に直接栄養を送る「胃ろう」に関し、国が接続コネクターの規格変更を進めている。旧規格の出荷を今年11月までに停止し、液体栄養剤が主流の国際規格に移行する。これに対し親らは「これまで通り家族と同じ食事を与えたいのに」と戸惑い、ミキサー食に向く旧規格の存続を求めている。
▽ねじ込み式
「ミキサー食に変えてやっと吐かないようになったんです」。浜松市の高田友美(たかだ・ともみ)さん(42)は、心臓などの難病で口から食事がしづらい次男(11)の世話をしている。液体栄養剤を胃ろうから入れていた頃は戻してしまうこともあったが、今は家族と同じ食事をミキサーで砕いて与えている。
家で作った肉じゃが、きんぴらごぼう、サバの竜田揚げのミキサー食を口に入れると、次男はおいしそうに体を揺らした。食べきれない分は胃ろうで注入した。
高田さんの負担がここ1年、倍増したのは、通院先で配布される胃ろう接続コネクターが変わったからだ。旧規格の押し込み式から国際規格のねじ込み式になり、シリンジ(注射筒)やチューブも細くなった。半固形のミキサー食だと吸い上げるのに力が必要な上、ねじ部分に食材がこびりついて固まり外れなくなることもある。
高田さんは「接続部が外れずに胃ろうの器具自体がおなかから抜けたり、壊れた部品が体内に入ったりしたら一大事になる」とも危惧する。
▽「なじまない」
厚生労働省がコネクターの規格変更を全国に通知したのは2018年3月。点滴などの医療機器との誤接続を防ぐ医療安全と、共通の国際規格が安定供給につながるというのが理由だ。旧規格は21年11月までに出荷停止にするとしたが、医療的ケア児の家族らが反発したことなどで、停止時期を22年11月に延期した。
在宅医療に詳しい金沢市の小川医院の小川滋彦(おがわ・しげひこ)医師は「ここ10年間で急速にミキサー食が広まった。液体栄養剤で頻繁に起こった食道逆流や体重低下が抑えられ、メリットは大きい」と指摘する。国際規格については「液体注入を前提としていて、日本にはなじまない」との考えだ。
▽指針必要
他方、急性期医療を担う救急病院などでは一刻を争う状況も多く、医療機器の接続ミス防止に役立つ規格統一は、医療安全につながる。
規格が混在する問題点について横浜栄共済病院の中川孝太郎(なかがわ・こうたろう)臨床工学技士長は「不慣れな職員が誤接続をしてしまったり、接続に手間取り緊急措置が間に合わなかったりと致命的なミスも生じかねない」と話す。
医療的ケア児の食事の重要性には理解を示し「在宅ケアが負担にならないよう、厚労省は、国際規格にあったミキサー食の粘度や栄養など、食事に関する一定の指針を設け、啓発する必要がある」と求めた。