<最北の激熱温泉>
「あっちぃーっ!」
脚をいれ終わったところで、あわてて埋め込まれた青い浴槽から板張りの床に転げ出る。掛け湯をしたときから、すごく熱いとは思っていたがここまでとは。四十五度を軽く超えていそうだ。
数名の地元客は見ぬふりをしているが、いまの叫びが聞こえぬはずはあるまい。
(ああ、いっぱしの温泉通をきどっているのに、まったく格好わるい・・・)
加水して適温にしたいが、そんな雰囲気でもなさそうだ。よーし、こうなったら、なんとしても入ってやる。
板張りの床に座って、激熱の湯にそろそろと脚の先だけいれてみる。すぐに湯ががぶりと噛みついてくるが、これをぐっと我慢する。
湯に慣れてきたところで、すこしづつ膝までいれていった。掌で湯を掬い、上半身にぴちゃぴちゃと掛ける。
頃合いを見計らって、身体を沈めていく。息が止まるほどの熱さだが、準備時間をおいたのが功を奏して肩まではいった。どうだ、できたじゃないか。
それにしても熱い温泉である。熱すぎて身動きがかなわぬ。
匂いは、泉質は・・・なんて余裕がまるで出てこなかった。
ここは下風呂温泉の共同浴場の「新湯」である。
北海道旅の最初の宿である宮城の遠刈田温泉を朝早くに出発して、一気に下北半島最北端の、下風呂温泉まで走り抜いた。
宿に荷物を置くと、タオルだけ持って共同浴場にきたのだ。近いので選んだ「新湯」のほかにもうひとつ「大湯」がある。
ホゲホゲとなった身体をさますため、冷たいペットボトル片手に小さい温泉街を散歩する。
そういえばこの温泉街のホテルに泊ったときの温泉は、硫黄臭が強い白濁した温泉だった。さきほどの温泉は硫黄臭も濁りも薄かったと、ようやく比較する余裕がでてきた。
温泉街に沿っている国道を渡ると、小さな港があり、漁を終えた漁船が静かに休んでいた。堤防の向こうは津軽海峡である。
宿に戻って浴衣に着替えると、懲りずにまた温泉にはいることにした。
やっぱり、ここも熱くてはいれない。
ほかに誰もいないので水を盛大に出して、蛇口の付近から身体を沈めていく。
明日は、北海道だ。洞爺湖の安宿をとってあるが、まずはカルルス温泉でもいってみることにしようか。
ゆっくり熱めの硫黄泉を楽しみながら、思いを馳せる。
部屋に戻って、持ち込んだ酒をちびちびと呑み始めていると早い夕食が運ばれてきた。
明日の朝食は一番のフェリーに乗るのでいらない、というとおにぎりを作っておくと言ってくれた。
この宿、とても感じがいいのだが、鍵がない。襖を閉めるだけの部屋で金庫もない。
べつにたいした貴重品など持っていないが、トイレも共同であるから、部屋に旅費がはいった財布を置いておくのは危ない。そこで明日支払う宿賃分だけ抜いて車のなかに隠しておくことにした。
食べ終わった膳を下げてもらい、本格的に呑む。
さきほど温泉にいってみたら、脱衣籠を使わず、更衣室の床に脱ぎ散らかして入浴している客がいて、気味が悪くて帰ってきてしまったのだった。
まあいいや、朝風呂にはいるとしよう。
明日のフェリーは七時ごろに出航である。ここから港まで大体三十分とかかるとみて、六時には宿を出発しよう。
となると、遅くとも五時ごろには起きないといけない。
時計を見て、あと一杯で切り上げることにした。
→「カルルス温泉」の記事はこちら
→「洞爺湖温泉の記事」はこちら
「あっちぃーっ!」
脚をいれ終わったところで、あわてて埋め込まれた青い浴槽から板張りの床に転げ出る。掛け湯をしたときから、すごく熱いとは思っていたがここまでとは。四十五度を軽く超えていそうだ。
数名の地元客は見ぬふりをしているが、いまの叫びが聞こえぬはずはあるまい。
(ああ、いっぱしの温泉通をきどっているのに、まったく格好わるい・・・)
加水して適温にしたいが、そんな雰囲気でもなさそうだ。よーし、こうなったら、なんとしても入ってやる。
板張りの床に座って、激熱の湯にそろそろと脚の先だけいれてみる。すぐに湯ががぶりと噛みついてくるが、これをぐっと我慢する。
湯に慣れてきたところで、すこしづつ膝までいれていった。掌で湯を掬い、上半身にぴちゃぴちゃと掛ける。
頃合いを見計らって、身体を沈めていく。息が止まるほどの熱さだが、準備時間をおいたのが功を奏して肩まではいった。どうだ、できたじゃないか。
それにしても熱い温泉である。熱すぎて身動きがかなわぬ。
匂いは、泉質は・・・なんて余裕がまるで出てこなかった。
ここは下風呂温泉の共同浴場の「新湯」である。
北海道旅の最初の宿である宮城の遠刈田温泉を朝早くに出発して、一気に下北半島最北端の、下風呂温泉まで走り抜いた。
宿に荷物を置くと、タオルだけ持って共同浴場にきたのだ。近いので選んだ「新湯」のほかにもうひとつ「大湯」がある。
ホゲホゲとなった身体をさますため、冷たいペットボトル片手に小さい温泉街を散歩する。
そういえばこの温泉街のホテルに泊ったときの温泉は、硫黄臭が強い白濁した温泉だった。さきほどの温泉は硫黄臭も濁りも薄かったと、ようやく比較する余裕がでてきた。
温泉街に沿っている国道を渡ると、小さな港があり、漁を終えた漁船が静かに休んでいた。堤防の向こうは津軽海峡である。
宿に戻って浴衣に着替えると、懲りずにまた温泉にはいることにした。
やっぱり、ここも熱くてはいれない。
ほかに誰もいないので水を盛大に出して、蛇口の付近から身体を沈めていく。
明日は、北海道だ。洞爺湖の安宿をとってあるが、まずはカルルス温泉でもいってみることにしようか。
ゆっくり熱めの硫黄泉を楽しみながら、思いを馳せる。
部屋に戻って、持ち込んだ酒をちびちびと呑み始めていると早い夕食が運ばれてきた。
明日の朝食は一番のフェリーに乗るのでいらない、というとおにぎりを作っておくと言ってくれた。
この宿、とても感じがいいのだが、鍵がない。襖を閉めるだけの部屋で金庫もない。
べつにたいした貴重品など持っていないが、トイレも共同であるから、部屋に旅費がはいった財布を置いておくのは危ない。そこで明日支払う宿賃分だけ抜いて車のなかに隠しておくことにした。
食べ終わった膳を下げてもらい、本格的に呑む。
さきほど温泉にいってみたら、脱衣籠を使わず、更衣室の床に脱ぎ散らかして入浴している客がいて、気味が悪くて帰ってきてしまったのだった。
まあいいや、朝風呂にはいるとしよう。
明日のフェリーは七時ごろに出航である。ここから港まで大体三十分とかかるとみて、六時には宿を出発しよう。
となると、遅くとも五時ごろには起きないといけない。
時計を見て、あと一杯で切り上げることにした。
→「カルルス温泉」の記事はこちら
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