温泉クンの旅日記

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日光江戸村(1)

2015-04-26 | ぶらり・フォト・エッセイ
  <日光江戸村(1)>

 鬼怒川温泉駅からバスで十五分くらいのところに「日光江戸村」がある。途中の「東武ワールドスクエア」で降りる観光客も多い。

 たしかにずっと前に一度だけ行ったという朧な記憶があるのだが、獏として思いだせない。記憶の風化だけではなく、そのあとに行った京都の「太秦映画村」のほうが強烈だったせいかもしれない。



 広大な敷地には、江戸時代の街道や宿場、武家屋敷など江戸の町並みが再現されている。
 関所で入場券を渡す。





 街道を歩いていくと、旅人を休ませてくれる茶屋がある。





 歩き疲れたときに、甘酒に団子なんかは甘党でなくてもきっとありがたいことだろう。

 テレビ東京系の時代物のドラマでは、もっぱらこの日光江戸村を使うことが多いようだ。
 きっと低予算で済むのだろう。安上がりといえば、ワンカットだけだが、あれはたしかに清澄の江戸資料館にあった長屋だろうというドラマも観た覚えがある。
 今月から放映された「猫侍」の新シーズンもここ江戸村での撮影である。

 四月から、BSジャパンで「松本清張ミステリー時代劇」が始まった。
「無宿人別帳」、「彩色江戸切絵図」、「紅刷り江戸噂」の三作の短編集をもとにドラマ化したものである。
 松本清張は長編も短編も面白い作品を書ける稀有の作家だが、わたしは時代物ではたしか一度だけドラマ化されたことがあるようだが、全五巻ある長編の「西海道談決綺」が好きである。

 捕縛された罪人は牢に入れられて、お裁きを待つ。



 十手風を吹かせて無宿者に睨みをきかせたり、商家から金をせびっていた悪徳な目明かしが捕まって牢に入れられるとそれは悲惨なことになる。

  『同心は仁蔵を引き立てて格子外のざやまで来ると、
  「大牢」
   と呼ばわった。内から陰気な声で、へえい、と答えがあった。牢名主の返事である。



  「入牢があるぞ。内藤主計頭殿お懸り、大伝馬町塩町、無職、仁蔵、年四十一歳、一人じゃ」
   なるほど、目明しというのは正式な職業でないから、町人というほかはない。仁蔵は、ほっとした。
  「有難うございます」
   牢名主は受けた。



   三尺四方の留口から仁蔵が這い込むとき、
  「さあ、来い」
   と中に待ち構えた名主と一番役が、仁蔵の尻を強かに引っぱたいた。仁蔵は肝をつぶした。
   内はうす暗い。入牢は大てい暮れがたに決まっていた。すえた体臭と汚物の臭いが仁蔵の鼻をついた。



   恐る恐る見廻すと、正面に畳を高くつんで名主が彼を睨みつけていた。思わず首を縮めると、
  彼は襟首をとられて押えつけられ、きめ板でいやというほど背中を叩かれた。』


       松本清張著「無宿人別帳」(角川文庫)―「町の島帰り」より

 身から出た錆であるが、目明かしという身分がばれれば時に死につながる苛めが約束される。悪徳警察官や悪徳刑事が捕まって刑務所に入れられると、入所者にしこたま可愛がられる(?)現代となんら変わらない。


  ― 続く ―


   →「東武ワールドスクエア」の記事はこちら
   →「深川森下、下町食堂」の記事はこちら
   →「鬼怒川、五つ星の宿(1)」の記事はこちら

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