温泉クンの旅日記

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厚岸で牡蠣狂ひ(2)

2019-11-24 | 食べある記
  <厚岸で牡蠣狂ひ(2)>

 俗に「牡蠣は暦の月の英語表記で「R」の付く月に食べるべし」という。つまり9月から4月までの間に食べろ、5月から8月の間は食べるな、ということだ。
 ところが、である。厚岸の牡蠣はなんと一年中食べられるというから驚きだ。

 

 厚岸の地名はアイヌ語「アッケシイ(牡蠣のいるところ)」に由来する。低水温で養殖の時期を調節することで旬の牡蠣を年中出荷を可能にした、厚岸は国内で唯一の産地なのだ。もちろん、最も美味しいのは厚岸湖に張った氷の下で厳しい冬を迎えて、旨み成分のひとつであるグリコーゲンをたっぷりと蓄積した時期(12月~2月)だ。

 

 続いて最後の蒸し牡蠣の皿がやってきた。 

 

 ひとつにレモンを絞りかける。レモンは牡蠣の鉄分吸収する助けをしてくれるのだが、失敗だった。生では気にならなかったが、蒸した牡蠣の温かみにレモン汁が反応して酸味がとにかく「オレが俺が」とでしゃばり過ぎる。だから、もう一個はなにもかけずに食べたが、これが最高。ある種、官能的とさえいえる美味であった。

(うぅむ・・・。もう少し生牡蠣が食べたくなってきたぞ)
 生では一番安い<マルえもん>の旨みが一番濃かったように思える。いま食べた蒸しもマルえもんだった・・・えーい、いっちゃえ。
「すみませーん!」
 手をヒラヒラあげて呼び、<マルえもん>の生を四個くれと追加してしまう。
 周りの客がちょっぴり驚いていたがこれは無視。旅先で「せっかく来たんだから、いつまた来られるかどうかわからないし」を錦の御旗に土産をドカッと買いこむオバちゃん軍団をよくみかけるが、まさにいまのオレはあれだ。

「ん!?」
 追加の生牡蠣とスパゲッティが同時に届いて眼を剥いた。
いかん、最初にメニューを渡された時に勧められてスパゲッティ頼んだのをすっかり忘れていた。

 

 

 

(まあ、いいか。食べられるだけ食べて残せばいい・・・)
 川が運んでくる滋養分と海の豊富なプランクトン、その両方を取り込んで低水温でゆっくり育ちコクと旨みが濃密な牡蠣となるのだ。

 

 その生牡蠣にじっくり取りかかる。北の海の豊穣がいい具合に凝縮された、ふっくらとやわらかい身を噛みしめる。口のなかに北の海が迸る。濃厚で深い甘みを心ゆくまで堪能する。

 さあて、最後の最後、ランチメニューのパスタランチの和風スパゲッティだ。

 

「え!?」
 なにこれ。まったく期待していなかったのに、ひと口食べてまたも瞠目してしまう。
 スパゲッティ中にくまなくたっぷり牡蠣のエキスが回っている。そこに、食べ慣れた浅蜊のエッセンスも脇からセミオートで絶妙な援護射撃。
 これはタマラン、こんなたまらなく旨いスパゲッティ喰ったことないぞ。だいたいスパゲッティはポモドーロかアラビアータか塩味しか食べたことはない。醤油味は初めてだった。これが和風スパゲッティの味の基準になったら、他の店で頼めなくなっちゃいそうだ。

 サラダだけちょっぴり残してすべて完食してしまった。
 わたしにしては恐ろしく高い勘定の、大いなる誤算の午餐であった。悔いはない。
 これでしばらくは、牡蠣はいいや、である。



  →「厚岸で牡蠣狂ひ(1)」の記事はこちら


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