温泉クンの旅日記

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麒麟山温泉、絵かきの宿(3)

2018-10-21 | 温泉エッセイ
  <麒麟山温泉、絵かきの宿 (3)>

 抜けるような青空の朝を期待して目を覚ましたが、昨日と変わらず曇天だった。



 まあ、これはしょうがない。旅先では、雨でないことだけでも良しとしなければいけないのだ。
 煙草に火を点けると、視線を窓外に広がる景色に万遍なくゆっくりと漂わせていく。



 対岸の樹木だがヤナギの種類が多いらしい。
 樹木群の中には、きっと多くの動物や鳥や昆虫も生息、休息しているに違いない。そして樹木群は動物たちをひそやかに移動させ、鳥たちの巣をつくる場所を提供し、葉や実は鳥や昆虫の餌になることだろう。



 水辺の樹木は水面に涼しい日陰をつくり、川面に伸びた枝や河原のツルヨシから落下した昆虫が魚たちの餌となる。
 あまりにも静かな風景の下方でそんな営みが飽かずに繰り返されているのだ。

 タオルと髭剃りを手に、内風呂に向かう。





 昨日の夜とは大違いで、今朝はガラス戸の向こうに川の景色がすっきりと見渡せる。



(そういえば、今日は週末だから運が良ければSLが対岸を走るのをみられるかも・・・)
 川向こうの樹木群に隠れたところに敷かれた磐越西線は、月に何度かの週末に、新津・会津若松間に蒸気機関車が一往復だけ走るのである。
 前に泊まったときに、川向こうからいきなり鋭い汽笛の音と走行音が渡ってきて慌てて眼を凝らすと、運よく、緑の着物の裾からチラリとこぼれる赤い蹴出しのようにほんの数瞬だけ機関車が爆走していくのがみえたのだった。



 品揃え文句なしの朝食である。
 さすがは新潟、と唸るほど旨いご飯を二杯平らげると、最後の締めの露天風呂だ。



 絶景もしばし見納めとばかり、鼻唄を口ずさみながら長湯をしてしまう。



 この宿は「絵かきの宿」と謳っているだけに、部屋には宿泊客が自由に使えるスケッチブックと鉛筆が置いてある。フロントにいけば、色鉛筆や絵の具も貸してくれる。
 絵心がそれほどなくても、目の前の風景をみているとなんとなく描きたくなってくる。



 フロント近くの壁にはそんな風景画がいくつも架かっていた。



 風景をみるだけで満足してしまうわたしも、連泊すれば絵を描いてしまいそうな気がするのだ。まあ・・・もしかしたらだが、としておく。




  →「麒麟山温泉、絵かきの宿 (1)」の記事はこちら
  →「麒麟山温泉、絵かきの宿 (2)」の記事はこちら


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